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南方系の生き物は数日のうちに全滅

 生物の安否確認が終わるまでには1週間ほどかかった。

 惨状が次第に明らかになっていく。

 被害が大きかったのは「南の海の魚たち」「マングローブの水辺」のコーナーだ。

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「マングローブの水辺」のコーナー 写真提供 のとじま水族館

 南方系の生き物は数日のうちに全滅した。

「通常は23~24度の水温にしてあります。冬の能登の海は水温が10度前後です。水槽には海水を取り入れていたのでボイラーで温めていました。ところが、そうした設備が壊れてしまい、おそらく水槽の中も10度ぐらいにまで落ちたと見られます。熱帯に棲む生き物は生存できません。人間にたとえれば、半袖シャツ1枚で冷凍庫に入れられるようなものでした」と高橋係長は悲しげだ。

生き物が被災時にも生きられる対策は…

 これらのコーナーには人気の魚が多かった。

 全身が薄い青緑色のデバスズメダイは美しさで来館者を魅了した。

 チンアナゴは半身を砂にもぐらせたまま、頭胸部を外に出す。「にょきっと出たり引っ込んだりするのが面白く、子供達に人気がありました」(高橋係長)

 ウツボは見た目のインパクトがある。「ああした風貌だから、怖がる人もいるのですけれど、多くの人が興味深く観察していました。いつもは力強く上を向いているのに、だらんとなって死んでいました」(同)

ウツボ 写真提供 のとじま水族館

 トビハゼは泥地をピタピタと歩く。「周りをよく見るためか、目が両サイドに飛び出しています。顔つきがかわいいだけでなく、カエルのようにジャンプすることもありました」(同)

 こうした生き物が被災時にも生きられるような対策は取れないのか。

 高橋係長は「極めて難しいですね」とうなる。日頃から投げ込み式のヒーターを備えているが、大きな水槽を温めるには能力が足りない。小さな水槽に移すにしても、ウツボと小さな魚は一緒に入れられない。「言葉にしてしまえば軽くなってしまいますが、やはり想定外の被害だったのかと思います。そもそも職員の安全を確保しながら館内に入ったので、水槽に近寄れるまでに時間が掛かりました」と話す。