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年収2000万円超で東京メトロに「再就職」できる…東京都庁が手放さない「幹部の天下り利権」の知られざる実態

source : 提携メディア

genre : ニュース, 社会, 政治

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巨大化した天下りネットワーク

うらやましいだけで、問題は済まない。都庁では天下りという言葉は使わない。「再就職」と呼ぶ。むろん、個々人には職業選択の自由があり、民間にも同様なシステムがある。高い見識や能力を持つ行政官OBが民間で活躍することを一律に規制すべきでないとの考えが一般的だが、許認可権限をちらつかせた天下りが横行すれば、利益誘導など官民の癒着につながる。

そもそも天下りポスト欲しさに公的な組織が作られ、税金の無駄遣い、あるいは民業圧迫が行われているとの指摘もある。また、時代の変化にともない不要となった団体が、天下りポストの減少を嫌がって温存されるおそれもある。

さらに、本当に見識や能力が評価された上での採用なのか、という問題もある。静岡県の川勝平太知事が県庁の新入職員への訓示で、農業や畜産に携わる人を引き合いに出して「皆様は、頭脳、知性の高い方です」と発言し、辞任に追い込まれたが、この天下りを巡る問題でも官尊民卑の発想が根底にあるのではないかと感じる。

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33の政策連携団体、33の事業協力団体

東京都の天下りポストは一体どのくらいあるのか。以前よりも情報開示は進んでおり、都の人事部は公式サイトで毎年、幹部職員の「再就職先状況の公表」を行っている。

令和5年(2023年)度公表分を見ると、再就職(天下り)をした職員は計287人。うち局長等は24人、部長級が67人、課長級が196人となっている。再就職先(天下り先)で見ると、政策連携団体は27人、事業協力団体等は21人となっている。

政策連携団体とは、恩賜上野動物園や多摩動物公園、葛西臨海水族園などを運営する東京動物園協会(公益財団法人)、多摩都市モノレール(株式会社)など33団体(23年7月24日現在)。「事業協力団体のうち、都と協働して事業等を執行し、又は提案し、都と政策実現に向け連携するなど、特に都政との関連性が高い団体で、全庁的に指導監督を行う必要があるもの」を指す。