12歳年上の俳優メル・ファーラーとスイスで挙式
それから約2年後、今度こそオードリーにウエディングドレスを着るチャンスが訪れる。グレゴリー・ペックが主催するパーティでアメリカ人俳優のメル・ファーラーと出会い、恋に落ちたオードリーは、1954年9月25日、スイス・ビュルゲンストックの教会でささやかな結婚式を挙げる。
その際、彼女が腕を通したのはピエール・バルマンがデザインしたサテンのサッシュ、ボールガウンスリーブ、ハイネックのフレア丈ドレスに肘までの手袋を合わせたオートクチュールドレス。
その結婚はオードリーにとって、ロンドンでのモデルやダンサー、そして映画の端役を経て、ハリウッドデビュー以降も必死に駆け抜けた6年間の足取りを一旦休める貴重な時間であり、同時に、その人生を賭けて家庭人であろうと務めたオードリーの夢が叶った瞬間でもあった。
オードリーはこの結婚をこう振り返っている。「心から愛している男性と結婚したその日から、彼のいるところが私の家です」と。
ファーラーとの結婚生活は1960年7月の第一子、ショーンの誕生と、オードリーの度重なる流産と、双方の不倫の噂と、セレブカップルにありがちなスポットライトの落差、等、夢にまで見た幸せと不幸をもたらした結果、1968年にピリオドが打たれる。
オシドリ夫婦の離婚から6週間後のゴールイン
当初からオシドリ夫婦と謳われたカップルの結婚も、終わってみれば14年間というそれほど長くはない期間だったことが少々意外ではある。
でも、それ以上に意外だったのは、ファーラーとの離婚からわずか6週間後の1969年1月18日、スイス、モルジュの町役場で、オードリーが直前のエーゲ海ヨットクルーズで出会った9歳年下のイタリア人精神科医、アンドレア・ドッティと電撃結婚したこと。
ドッティは14歳の時、『ローマの休日』の撮影中にオードリーと握手していて、その時、母親に「いつか彼女と結婚する」と宣言したのだとか。こんな偶然あるだろうか。