絶頂期のテレビ番組を、もう作れなくなってしまった理由
岡村 しかし、いまとなってはあの絶頂期の頃の『スマスマ』や『めちゃイケ』みたいな番組ってもう作れないですよね。
鈴木 絶対無理です。コンプライアンスの問題もありますが、予算ですよね。1回の収録で何千万とかけるわけですから。すごくよく覚えてるのが、『めちゃイケ』でスタジオに作ったプールに一本橋をかけてそれを渡るゲームがあったんですが、そのプールを全部マヨネーズで埋めたんですよ(笑)。
岡村 えーっ!
鈴木 マヨネーズだけで何百万。匂いなんて観てる人に1ミリも伝わらない。でも、それを「アハハハハ」と笑ってた。90年代は失われた時代の始まりというけれど、90年代後半まではバブルの残り香はあったんです。世の中は小室哲哉ブームだったし。
でも、90年代後半から00年代になってくるとテレビを観ない若者が増えてきて、F3やM3と言われる50歳以上の視聴者の取り込みが始まったんです。それによって医療ドラマや刑事ドラマが一気に増えた。それがテレビの寿命を縮めてしまったと僕は思っていて。多くの若者は、テレビはもう自分には関係ないと思うようになり、そこにYouTubeが登場したんです。
岡村 おさむさんは、当時の25歳に向けてテレビを作っていたと言いましたが。いまの25歳との違いって感じます? というのも、年々、人間が幼児化しているような気がちょっとするんです。
例えば、高倉健さんとか石原裕次郎さんとか、彼らが25の頃の写真を見るとめちゃめちゃ大人。言動も。僕が25のときも自分たちは幼児化してると思ったけれど、それがどんどん加速しているというか。テレビも含めて世の中のホワイト化が進んでいるような気もするんですが、その帰結なのかなって。
鈴木 そもそも、大人に憧れることがないです、いまの若者は。僕らが20代の頃は、30代40代の人に三宿に連れて行ってもらい、大人の遊びを教わった。岡村さんの「カルアミルク」じゃないけど、飲めないカクテルを教わるカッコよさがあった。でもいまの20代が、いまの40代に教えてほしいことはなにもないんですよ。
※1990年代のテレビの裏側や、鈴木おさむさんの人生を変えた片岡飛鳥さんの一言、SMAPによる「謝罪放送」の内幕などについて語った全文は『週刊文春WOMAN 2024夏号』でお読みいただけます。
写真・杉山拓也
ヘアメイク・マスダハルミ(岡村)
おかむらやすゆき/1965年兵庫県生まれ。音楽家。86年デビュー。『TV Bros.』(東京ニュース通信社)で連載中の「あの娘と、遅刻と、勉強と」を書籍化した『あの娘と、遅刻と、勉強と 3』(東京ニュース通信社)が発売中。映像作品『アパシー』が10月16日発売予定。11月よりウィンターツアー開催予定。
すずきおさむ/1972年千葉県生まれ。19歳で放送作家デビュー、2024年3月31日に放送作家を引退。映画・ドラマの脚本や舞台の作・演出、映画監督、エッセイ・小説の執筆等、様々なジャンルで活躍。著書に『もう明日が待っている』、『最後のテレビ論』(ともに文藝春秋)など。
【週刊文春WOMAN 目次】特集 なぜ今、1990年代ブーム?/野宮真貴×小室哲哉 あの頃の渋谷/香取慎吾 90年代を描く、語る/田嶋陽子 83歳のフェミニズム/佐藤愛子 ぼけていく私 第2弾!
2024夏号
2024年6月20日 発売
定価715円(税込)