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 妹に「どうする? 俺はイヤだよ」って聞いたけど、妹も会いに行かず、そのまま亡くなりましたね。

――会おうとしなかった理由は。

野村 親父にも、結構な額のお金を貸してたんですよ。全部で800万円とかかな。おふくろと離婚した後、僕が売れている頃に「貸してくれ」って何度か来たんですよ。またなんかやって失敗したのかわからないけど、「これで最後にしてくれ」ってお金を渡してから会ってなくて。結局、一銭も返してくれなかったしね。でも、僕が一番イヤだったのは親父に借金があったらどうしようって。

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役所から「遺骨、どうします?」と連絡が来て…

――遺産を相続すると、借金まで引き継いでしまいますもんね。

野村 そう。だから妹と話し合って、遺産相続拒否を決めて。なんかもうイヤだったんですよね、親父の生き方が。

 その一方でね。「この人がいなかったら、俺はいなかったしな」みたいな。結局、そこに戻るというか。自分も子供がいて、親になるとね。

 役所から「遺骨、どうします?」と連絡が来て。親父は自分の兄妹とも仲が良くなかったんですよ。だから、無縁墓とか共同墓地かなと考えたんだけど、なんだか可哀想になってきてね。やっぱ、自分の親父だからね。それで、かみさんと遺骨を引き取って野村家の墓に入れたんです。そこに、おふくろも入ってるんですよ。

50歳のとき授かった愛娘とのツーショット(写真=野村宏伸さん提供)

いろいろあったけど、無駄遣いだとは思っていない

 これがまた、面白い話というか。おふくろの遺骨が、再婚相手の家の都合で、あちらのお墓に入れられなかったんですよ。「どうしよう」と考えてたら、おふくろが「死んだら、野村のお墓に入りたいのよね」と言っていたのを妹が思い出して、「そうなの!?」って。

 僕も妹も、一緒に入ってたほうが墓参りもしやすいですからね。お寺のお坊さんに「こういうこと、いいんですか?」って聞いたら、「ああ、全然大丈夫ですよ」だって(笑)。

――離れた家族が再び集まったといいますか。公私ともに、相当に波乱万丈だったんですね。

野村 お墓に関しては、僕も驚きましたけどね。お金を稼いで、貸して踏み倒されちゃったり、大きな家を建てたり、手放したり、いろいろあったけど、無駄遣いだとは思っていないですよ。人生勉強になったし、そんなこと普通は経験できないじゃないですか。

 

撮影=石川啓次/文藝春秋

INFORMATION

【デビュー40周年記念舞台】

野村宏伸さんが、デビュー40周年を記念した舞台公演を行う予定です。日時、場所は以下の通り。

日時:9月18日~9月23日
場所:下北沢 「劇」小劇場

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。