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「あの子、彼氏とやったらしい」女子高では性経験が“ステータス”だったが…“産まない選択”をした私が、大学で性行為に恐怖を感じたワケ

『母にはなれないかもしれない 産まない女のシスターフッド』より #1

2024/06/21
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アルバイトでの挫折

「私は年をとってから結婚をして子どもは作らない人生を送る」

 この気持ちは大学生になっても残っていたのだが、その「結婚」に至るまでに何が必要かまでは考えていなかった。

「こりゃいかん」と私は男性恐怖症を脱するためにリハビリを始める。書店でアルバイトをするようになったのだ。

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 男子大学生のアルバイト店員が多い書店だった。最初は怖かったが、そこで、じょじょに同世代の男性との会話に慣れていき、初めての彼氏もできた。

 順調なはずだった。異性との交流とは関係のないところで予想外の事態が起きるまでは。

「レジでのミスが多いね」

 最初はやさしかった副店長が、だんだんと険しい表情をするようになったのだ。一生懸命がんばっているつもりなのだが、努力が足りないのかもしれない。アルバイトが終わっても居残りをして、反省文や改善点を書いたりレジ作業の練習をしたりしたが、バイト中はとことん失敗をして迷惑をかけてしまう。

 私よりあとに働き始めて、仕事中も雑談をしているバイト店員が器用にレジ作業をこなしているのに、私はいつまで経っても動きが遅かった。

 私がADHDの診断を受けたのはそれから約15年後、つい最近のことである。やっと当時のミスの原因を突き止めたのだが、大学生の私はまだそれを知らない。ミスをするたびに自己嫌悪でいっぱいになり、アルバイトが終わると泣きながら帰宅していた。

写真はイメージです ©optimus/イメージマート

「子どもを産んで家庭に入ったほうが幸せ」と思われている気がして

「もう20代なのに。あと何年かで就職するのに」

 中学2年生で新人文学賞に落選した時も、ほかの仕事でならと夢見ていた。

 しかしダメなのだ。「どんなにがんばっても、あなたはキャリアウーマンになれない。子どもを産んで仕事をせずに家庭に入ったほうが幸せ」と自分の周囲にいる全員から思われているような気がした。

 初めての彼氏と別れたあと、私はアルバイトで挫折した経験を恋愛で埋めようとした。男性恐怖症を打破するどころか、いわゆる「遅咲き」の恋愛体質になったのだ。

 恋愛経験は私に自信をくれた。

「私はいつか結婚したい。その夢は叶うのかもな」

 なんとなく思った。子どもを産む、産まないについてはあえて考えないようにした。

「あの子、彼氏とやったらしい」女子高では性経験が“ステータス”だったが…“産まない選択”をした私が、大学で性行為に恐怖を感じたワケ

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