自分の意志で「産まない人生」を生きている、フリーライターの若林理央さん。しかし、周囲からは「なんで産まないの?」「産んだらかわいいって思えるよ」「産んで一人前」などと言われ、傷つくこともあるという。なぜ彼女は、子どもを産まない選択をしたのか。周囲の反応に対して、どのような葛藤を抱えているのか。 

 ここでは、若林さんの著書『母にはなれないかもしれない 産まない女のシスターフッド』(旬報社)より一部を抜粋。大学進学後、性行為に恐怖を感じた理由とは――。(全2回の1回目/2回目に続く

写真はイメージです ©optimus/イメージマート

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「性行為は女性としてのステップアップ」と認識していた高校時代

 そんな高校生活ではあったが、教室の中にいる多くのグループでセックスの話題が交わされていたのは印象深かった。精神的な幼さと矛盾するかのように、身体は成熟に近づいていた私たち。いつしかセックスは「今経験してもおかしくないもの」になっていた。

「あの子、彼氏とやったらしいで」

 そう噂された生徒は、クラスメイト全員から一目置かれる。性行為は女性としてのステップアップだという共通認識があったのだ。

 その原因として考えられるのは当時の中高生は性教育が不十分だったことだろう。セックスが生殖行為だと知ってはいても、私を含めたほとんどの同級生は実際に妊娠するなんてテレビドラマの世界だけだと考えていたし、セックスに関することを親や教師など周りの大人に聞くなんてもってのほかだった。

 実際にほとんどの親世代にとって性に関する話題はタブーだった。大人たちから「家族や親族であっても、男性の前では生理の話をしてはいけない」と言われたこともある。

 通っている女子校でクラスメイトが「生理きた! ナプキン貸して~」と大声で言い、彼女の友だちが教室の端からナプキンを投げるのを見ながら、それを変なことだとも思わなかった。「生理は恥ずかしいことじゃない」という感覚は女子校に通っていたからこそ得たものなのかもしれない。