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「みんなカルティエの200万円ぐらいの時計してるのよ」

――そのメンバーで集まった時も、お互いの作品の話はせずですか?

桜沢 「あれ、面白かった」程度は言い合ったかもしれないけど、あまり漫画の話はしなかったですね。ただ、一緒に遊んでいて、その時の会話や情景がお互いの作品に出てくるということはありました。

――桜沢さんが以前、一番好きだとおっしゃっていた岡崎さんの作品「ハワイ・アラスカ」も、恋人同士のたわいもない会話がベースの短いお話です。

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桜沢 やっぱりそれが京子ちゃんらしい1本かなって。

――今振り返ると、桜沢さんのキャラクターは設定も新しくて。『メイキン・ハッピィ』は大金を手にしてニューヨークで起業するOLが主人公で、『エスケープ』はAV女優が主人公でした。

桜沢 いろんな職業の女の子を描こうと思っていた気がします。『エスケープ』は、80年代に黒木香さんが出てきて、90年代に飯島愛さんが脚光を浴びたことで、「アリかな」と思ったんだと思う。

『メイキン・ハッピィ』が起業モノだってことは、今言われて初めて気づきました。あの作品を描こうと思ったのは、当時、中尊寺とニューヨークで合流して遊んだのが大きかったかもしれません。

『お嬢だん』1巻より ©中尊寺ゆつこ/双葉社

 その頃の中尊寺は、ニューヨークの日本人社交界の華である人物と仲良くなるために、果敢にアタックしていて。「みんなカルティエの200万円ぐらいの時計してるのよ。それくらいのしないとだめなのよ」とか、「迷ったら、ダイヤは大きいのを買いな」とか言って。

――まさに『メイキン・ハッピィ』の世界ですね。

桜沢 一方で、私がバーキンばっかり買ってた時期に、「エリカちゃん、お金はもうちょっと有意義に使った方がいいよ。そのバーキン1個諦めれば、ニューヨークで個展ができるでしょ? そしたらそれがキャリアになるんだよ」って。私は「でも、バーキンが欲しいんだもん」と思ってましたけど。

『メイキン・ハッピィ』1巻より ©桜沢エリカ/祥伝社 FEEL COMICS

――お金を持った女の子がどんどん自己投資していく、という世界観も『メイキン・ハッピィ』っぽいです。

桜沢 やっぱり、中尊寺から学んだことは大きいですね。

※90年代の働き方や、当時の社会にあった“根拠なき自信”、岡崎京子さんや中尊寺ゆつこさんなど同世代の漫画家の作業場の風景などについて語った全文は、『週刊文春WOMAN2024夏号』でお読みください。

Erica Sakurazawa
1963年生まれ。マリー・ローランサンとココ・シャネル、ともに1883年生まれの才能豊かな二人を中心に、華やかなパリの20年代を描く『パリ 1921―蠍座の女と獅子座の女』が家庭画報.comで連載スタート。