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――六郎は令那や繁のおかげもあり、父親との関係を昇華できましたが、今村さんご自身は「乗り越えたな」と感じた瞬間はありますか?

 えーとね、まだやね。でも僕にとって、繁や令那みたいな存在はいますよ。

 例えば編集者さんとか、出版関係で繋がっていった人たちもそうだし、自分の事務所の若い子らとか、教え子も含めて、支えられてますね。

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 そういう、これまで出会った人たち、事務所の人たちが、僕にとっての繁や令那なのかもしれないです。だから、(家族と和解するならば)この先かもしれないですね。

 綺麗事って言われるかもしれないけど、僕は人と人の関係って、希望を捨てたらダメだと思ってます。希望はもって、期待はしない。期待をすると「裏切られた」とかなるんだけど、希望自体を捨てんのとは違うなと。

2019年12月、長崎県松浦市の鷹島にて©文藝春秋

――六郎は希望を捨てない強さがありました。本作を読んで私が一番感銘を受けたのは、「暴力に暴力で返さなかったこと」。

 先程、この結末は「綺麗事かもしれない」と仰ってましたが、私は世界中で戦争が起きているこういう時代だからこそ、本作のような小説が必要だと感じました。

 だから僕も戦争とか、そういうテーマは結構扱って来てます。

 さっきも希望って言ったけど、人間の行きつく所が「そこ」であってほしいし、「そこ」を掲げ続けること自体は、やり続けなくてはいけない。放棄したらダメだと思ってて。

2019年12月、長崎県松浦市の鷹島にて©文藝春秋

 現実はそんなうまいこと行かないかもしれないし、戦争という状況になったら、僕だって大切な人を守るために武器を取るかもしれない。

 だけど、世の中の人全員が希望を捨ててしまった時に、もう一段階、人というのは凄惨な道を進むような気がするんです。だから、希望を「持つこと」が大切。世の中が希望を持つことによって、全世界に「葛藤」が生まれる。葛藤は、戦争の抑止になると思ってます。