ドラマ『春になったら』(2024年)でも好演、今夏には男女の性の格差をテーマにした映画『先生の白い嘘』で、親友の婚約者(風間俊介)にレイプされる主人公を演じ、秋に公開されるベストセラー小説の映画化『傲慢と善良』でも主演を務める――。29歳にしてまさにトップ女優へと歩みを進める奈緒だが、ここまでの歩みは順風満帆ばかりではなかった。

 福岡から上京後、民放ドラマに出演できるまで1年。マネージャーの手伝いもしていた彼女の転機とは……。

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改名と墓参りと朝ドラ出演の決定

2020年映画『みをつくし料理帖』大ヒット祈願祭にて ©AFLO

 福岡時代は「奈緒」として活動していたが、上京時に「本田なお」という芸名を名乗っている。あらためて「奈緒」として再出発を決めたのは22歳のとき。亡くなった父親がつけてくれた名前だった。改名にあたって、母と二人で父が眠る墓前で報告した。

「奈緒という名前で改めて頑張るから応援してくださいと、父に伝えるのと同時に自分にも言い聞かせる形で。自分の中で一つの覚悟ができたような気がしました」(神戸新聞NEXT 2021年9月4日)

 改名と墓参りについては不思議なエピソードがある。今の事務所に所属したとき、当時のマネージャーに名前の字画が悪いことを指摘された。さらに家族について聞かれて亡くなった父のことを話すと「お墓参りに行ってる?」と尋ねられたという。墓参りにはずっと行ってなかった。

 マネージャーは「お父さんもきっとこの仕事を応援したいけど、自分の知らない名前になっていて、応援するにもしきれない状況で……たぶん今そばにいるよ」「『芸能界で頑張るから応援して』って今すぐ行って来なさい!」と福岡までの飛行機代を出してくれた。すぐさま母と二人で墓参りに行ったところ、落選続きだった朝ドラのオーディションに初合格したという(AdverTimes. 前出)。

そしてはじまる『半分、青い。』

「人によってはタイミング、偶然と言われるかもしれませんが、私としては現在の芸名である“奈緒”に変えたことで、風通しがすごくよくなった感覚があります。父は『たくさんの人に愛されるように』という意味を込めて奈緒という名前を付けてくれたそうです。私も奈緒という名前は氏名であり使命だと思っているので、奈緒で活動する以上、自分が携わった作品が沢山の人に愛されるような役者になりたいという気持ちになりました」(神戸新聞NEXT 前出)

 合格したのはNHK連続テレビ小説『半分、青い。』(2018年)の永野芽郁が演じる主人公の親友役。役名が自身の名前と同じ「菜生(なお)」というのも運命的に感じた。

 洋品店の娘という役だが、実際に母も子供服店を経営していたし、中学時代に美術部に所属していたという設定も同じだった。役が決まったことを母に伝えても信じてもらえなかったが、ホームページの写真を送ったら泣きながら喜んでくれた。