数十年前のこと。若かりし日の著者は、80歳を過ぎた祖母の一生に一度の願いだったロンドン旅行に付き添うことになった。旅費は全額親戚持ち、飛行機はファーストクラスで、ホテルは5つ星。現地での各種観光までセッティングされている好条件に目がくらみ、甘い考えで引き受けた2人旅。まるで「姫」のように気ままに行動する祖母に、ひたすら振り回され続ける著者。だが、次第に祖母との付き合いから、大事なことを学び始める……。
30年近いキャリアを誇る小説家の著者が、投稿サイトに連載して好評を博したエッセイに、書き下ろしをくわえて書籍化。ユニークな題材と軽妙な語り口で、従来のファン以外にも多くの読者を獲得した。刊行から1年が経った今も、好調な売れ行きを見せている。
「小説のような味わいのエッセイですが、エッセイだからこその気取らなさがあり、身内としての容赦のなさと温かい視線が入り混じった独特な魅力を感じました。お祖母様の激しいわがままぶりも、時を経たことで著者の中で整理され、印象が和らいでいたのもよかったですね。おかげで著者に対するお祖母様の手厳しい助言を、読者も素直に受け入れられているのかもしれません」(担当編集者の大枝倫子さん、萩原清美さん)
主な読者層は30代から50代の女性。プレゼントとしての需要も高いそうだ。