2018年に東京大学史上初の経営学博士となり、現在は慶應義塾大学商学部で准教授の任にある著者。華々しくエリート街道を歩んで来たかのようだが、実際は生まれこそ裕福だったものの、父親が事業で失敗。中卒自衛官として生活費を稼ぎながら学費を貯め、苦学をして現在に到っている。
そうした歩みを支えたのが著者の考える〈経営〉の概念。といってもいわゆる〈企業経営やお金儲け〉を意味するのではない。本書は他者と自分、社会と個人をともに幸せにする合理的思考を支える概念としての〈経営〉を世に知らしめるために書かれた啓蒙書だ。
著者にかかれば、家庭生活や恋愛、勉学や就活、怒りの感情や老後の心配、もちろん仕事の問題も、すべて〈経営〉の問題として整理される。ユーモアあふれる巧みな文章に引き込まれて読み進めるうちに、まさにタイトルどおり、〈世界は経営でできている〉と納得させられる。
「一般的な教養新書とはかなり異なる雰囲気の本だと思います。タイトルとコンセプトは私からご提案したのですが、普通の研究者の方だったら、既存の価値観を刷新するようなエッセイを書くのは嫌がるのではないかと。著者は国内外で実績のある優秀な研究者ですが、とにかく人としておもしろい。それが伝わる本になったと思います」(担当編集者の佐藤慶一さん)