田舎における「地域おこし協力隊」の活動への評価は厳しくなりがちで、通常の移住とはまた違う軋轢が生じやすい理由とは? 徳島大学大学院教授の田口太郎氏の新刊『「地域おこし協力隊」は何をおこしているのか? 移住の理想と現実』(星海社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)

「地域おこし協力隊」がトラブルメーカーと見なされてしまう理由とは? 写真はイメージ ©getty

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「地域おこし協力隊」は公共事業であるがゆえに軋轢が起きやすい

 近年の炎上でたびたび話題になるのが「地域おこし協力隊」である点は、大きな問題だと考えています。前編で炎上の事例として挙げた3件のうち、個人が情報発信した2件は地域おこし協力隊が関係しています。

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「地域おこし協力隊」とは、都市部の住民が地方に移住し、“地域協力活動”に従事する取り組みで、2009年に始まりました。総務省が主導している制度です。この地域おこし協力隊が各地で活躍する事例が多くなってきたことから、令和5年度で約7000人いる協力隊を、2026年までに1万人に増やすという目標を、現在政府は掲げています。

 都市から地方へ多くの若者が移住し、地域を盛りあげる活動に励むのは素晴らしいことであり、それを国が支援することも素晴らしい、というのが多くの方の印象ではないでしょうか。そして、移住したくともなかなか地方で仕事が得られない中で、「地域おこし」という仕事を国が支援したことは、地方移住に関心を持つ人びとの背中を大いに押しました。これは事実です。

 ただ一方で、地域の側から見ると少し異なった印象を受ける人もいます。というのも、この事業は“国が支援する事業”だからです。つまり公共事業。特別交付税という自治体の一般財源ではない特殊な財源ではあるものの、国民から集められた税金で活動が支えられている公共事業であるため、地域住民からすれば公共的な価値、つまり多少なりとも自分たちにも利益がある活動であるかという視点で見てしまいます。しかし着任した協力隊自身は「移住・定住」に向けた取り組みと考えている面もあり、都市部での仕事ではなかなか得られなかった充実感を得られる“自主的な地域協力活動”と捉えがちです。

 また、各自治体が定めている人件費である報償費(2024年度からこれまでの制度が拡充され、年間320万円、スキルや地理的条件を考慮したうえで、最大420万円まで特別交付税措置の対象)は、都市部の人びとにとっては特段大きな人件費と感じないかもしれませんが、地方の若者からすれば“いい給料”です。にもかかわらず、主たる仕事は地域協力活動、地域おこし活動であり、地域住民からすると、自分たちが普段余った時間を利用して無償でやってきたことに似ているようにも見えてしまう。活動が独りよがりだと捉えられてしまえば、当然反発も生まれます。どうしても「地域おこし協力隊」の活動への評価は厳しくなりがちで、通常の移住とはまた違う軋轢が生じやすいのです。