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 それでも、山口さんに対する態度は松岡さんが最も強硬だった。

 事件が発覚して警察の取り調べが始まった後もメンバーに伝えず、仕事も続けていたことについて「なぜすぐに連絡をくれなかったのか」「どういう気持ちでテレビに出ていたのか」と前のめりで訴え、「自分にはそのメンタルはないです」と唇を震わせて断言する。

©文藝春秋

 辞表についても「僕が同じ立場なら、その辞表を会社に出せるのか、ずるい」と理解不能だと話した。

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「悪いのは彼」「まず自分と向き合ってくれ」と語気荒く突き放す姿からは、見限るというより「もう無理だ」という怒りが読み取れる。それまで培ってきた仲間意識や信頼感はあるものの、その全てが裏切られた悲しみと、自分たちが山口さんを止められなかった悔しさがないまぜになっていた。

「彼の甘さがにじみ出ていたような気がします」

 感情がエスカレートしていく松岡さんとは対照的に、長瀬さんは最初から最後まで淡々としていた。

 言葉は厳しいが、感情を呑み込むように低い声で一語一語ゆっくりと会場中に視線を送りながら話す。左肘を曲げ手の甲を背中に当てて自分を落ち着かせようとする仕草もあったが、それでも時折身体は左右に揺れていた。

 山口さんの会見については「しっかり拝見しました」と言い、「やはりお酒のせいにしてしまった」と目をつぶって首を傾げ、「彼の甘さがにじみ出ていたような気がします」と視線を落とした。目をつぶったのは、そんな姿を見たくないという気持ちの表れだろう。

 質疑応答でも長瀬さんのコメントは短かった。辞表を見た時は「23年以上一緒にやってますから、やってましたから」と過去形に言い直し、「いろんなことが頭をよぎりました」とすでに5人での活動は諦めているように見える。

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 事件発覚後に仕事のために海外へ向かう必要があった長瀬さんは、情報番組でコメントしている城島さんや国分さんを見て「隣にいれないことが苦しくなりました」と口を一文字に結ぶ。

 バンド活動について聞かれると「彼(山口さん)が演奏する音がないと全く形にならない」と言うものの、「これからのことは4人でまたゆっくりと考えながら、話し合いながら」と4人での今後を見据えた発言をした。だがこの時、彼はTOKIOというグループの一員でいる意味を見失ったのかもしれない。

 一貫して山口さん本人よりも、グループの他のメンバーや被害者やその家族らの気持ちに配慮する様子を崩さなかった長瀬さん。謝罪の時も誰よりも長く深く頭を下げた。