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 最後にマイクを握った国分さんは、力のない怯えたような目をしていた。当時は朝の情報番組でMCを務めており、会見の前にも事件についてすでにコメントをしていた。

「ここ数日、複雑な状況でしゃべっています」と率直に話すが、憔悴した顔で口元は引きつっている。声に力はなく、表情は緩慢だった。

 それでもメンバーの中で唯一「山口を見捨てることはできません」と明言したのが国分さんだった。

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©文藝春秋

「手を差し伸べてしまいそうになることもあります。それはいけないんだとわかっていますが……」とくぐもった声で話し、「まだ冷静ではない」という時も顔からは感情が抜け落ちていたが、続けて視線をあげて緊張感をみなぎらせ、「山口を見捨てることはできません」と言い切った。

感情的な温度差は4人の中に明らかに存在した

 質疑応答でも「辞表を受理するとしても、脱退したとしても、今まで頑張ってきたやつだと思っているので」と判断を保留し、「見守る責任というのはあると個人的には感じています」と4人の中で最も山口さんに寄り添うスタンスを見せた。怒りよりも、心配が勝っているようだ。

「逃げ出したくなったこともあった」と話し、山口さんを擁護していると批判されかねない発言への不安を滲ませながらも、最後まで寄り添うスタンスは崩さなかった。

 会見では、ジャニー喜多川社長(当時)が発表したコメントについても質問が飛んだ。「私自身はすべての所属タレントの親としての責任を負いながら、今後も彼らがひととして成長できますよう、支援し続ける」というものだったが、記者は「ジャニーさんがコメントしてくれたことに対してどう思うか」と配慮に満ちた質問をするのが精一杯だった。

 城島さんはジャニー社長と電話で話したことを明かし「『大丈夫なの、明日会見なんだろう、頑張れよと』という風に励まされた……ような感じでした」と首を傾げた。頑張れという言葉が状況にそぐわず、社長の意図を計りかねたのだろう。

 松岡さんは「親にそんなコメントを出させるなんて、情けない気持ちで一杯です」と述べ、城島さんも「大丈夫なのかと言われた自分たちが申し訳なく」「まだ心配させているんだ」と眉間にシワを寄せてうつむく。長瀬さんは「申し訳ない気持ちです」とストレスからかスッと短く息を吸った。

 城島さんは会見を主導したのは自分たちだと主張したが、事務所の意向がなければ会見を開くことは難しい。その力関係は、こんなところに滲んでいた。

©文藝春秋

 山口さんに対する感情的な温度差は4人の中に明らかに存在した。それでも、全員が山口さんへの思いを語り、同時に彼の甘えを指摘した。仲の良さを売りにしてきたTOKIOだが、メンバーを見捨てることは「冷たい」という批判を招きかねない状態だった。一方で、許すムードを作っても「甘い」という非難は避けられない。

 どちらのリスクも最小限に抑える意味で、検察の処分が決まり、山口さんが辞表を出したタイミングでの会見となったのだろう。

 山口さんの会見に対する世間の反応を見て「切り捨て」を決断し、苦悩する彼らの姿を見せることで同情を集める結果になった。

 2つの会見はTOKIOが「4人グループ」として活動していくために必要な儀式だった。