本書でもうひとつ強く印象に残ったこと
本書でもうひとつ強く印象に残ったのは、グループのマネージャーだったイイジマサン(飯島三智氏)の肝の座り方だ。タクヤが授かり婚をしたときは、当初、進行中だったライブツアーの終了後に会見を開いて発表するつもりが、その前週に新聞にすっぱ抜かれたのを受け、イイジマサンは急遽予定を繰り上げ、ツアー途中での会見に踏み切った。
2011年に東日本大震災が起き、バラエティー番組をやる空気ではまったくないなかで、「こんな時だからこそ生放送をやりたい」と、『SMAP×SMAP』のスタッフに提案してきたのも彼女だった。たとえリスクがあっても、必要と考えれば実行する。それができるのも、イイジマサンがメンバーに絶大の信頼を置いていたからだと、本書を読んでよくわかった。
「もう明日が待っている」ことは間違いない
本書のもととなる小説の第1弾が発表されたのは『文藝春秋』の昨年の正月号である(発売は前年の2022年12月だが)。折しもこの年、SMAPが所属した事務所は、彼らがかつて謝罪した元社長が生前に繰り返していた性加害を告発され、社会から強い批判を浴びた。おかげで、小説に描かれた「ソウギョウケ」の圧力は期せずしてよりリアリティを帯びることになる。
他方で、著者が書くように、芸能人が事務所から独立するということも、かつては、それをやるなら仕事を干されることも覚悟せねばならないと思われていたのが、いまやそのタブー感もかなり薄れた。それもSMAPの「あの放送」が契機となったところも多分にあるのだろう。
このほか、芸能界も私たちも、それまで自分たちがとらわれていた価値観を疑い、必要とあれば変わらねばならない時期を迎えている。本書のタイトル、そしてその元となる彼らの名曲の一節のとおり、「もう明日が待っている」ことは間違いない。