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相続は誰の身にも降りかかってくる

その理由はいろいろ考えられますが、大きな要素としては、資産家のほうが相続に対する心の準備ができていることがあると思います。そうした家庭では、代々大きな財産を相続している方が多いので、普段から税理士や弁護士に相談していることも多く、いわば相続慣れしています。

「うちは、3000万円とか5000万円なんていう財産はないから関係ない」と思われるかもしれませんが、東京都区内に土地付きの自宅がある人の多くは、資産総額がそれくらいになることが多いのです。そうした家庭は、地価高騰によって不動産評価額が増えたケースが多く、手持ちの現金がないのに相続額だけが増えているためにモメやすいのです。

ここで1つ確認をしておくと、「相続」と「相続税」は、実はまったく別の問題です。

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相続税というのは、亡くなった人が残した財産の総額によって、課税対象になる場合とならない場合があります。それに対して、相続はあらゆる人に関係してきます。相続税がかからない人でも、相続の手続きから逃れることはできません。親が亡くなれば、誰でもその財産を相続することになるからです。相続放棄という方法もありますが、それはそれで、またそのための手続きが必要です。遅かれ早かれ、誰の身にも降りかかってくるのが相続問題なのです。

天野 隆(あまの・たかし)
税理士法人レガシィ代表社員税理士・公認会計士
1951年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。アーサーアンダーセン会計事務所を経て、1980年から現職。著書に『やってはいけない「実家」の相続』(青春出版社)など多数。