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節税の「常識」が人間関係では「非常識」に

例えば、「夫が亡くなった場合、妻と子で相続したほうが節税になる」というのは、相続の公平性や節税の面からいえば正解かもしれません。しかし、人間関係や家族の平穏を考えるのなら、「夫が亡くなった場合、すべての財産は妻が相続したほうがよい」というのが正解です。

残された妻と子の人間関係を考えれば、妻がすべてを相続したほうがいいのです。この例に限らず、節税テクニックにおける「常識」が、実は人間関係では「非常識」である場合も少なくありません。

財産分配や節税テクニックが「技術」だとしたら、人間関係のテクニックは「心」の部分といってよいでしょう。私は、どちらにも目を配った「技術+心」で相続の仕事にあたってきたつもりです。

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とはいっても、私だけが「心も大事ですよ」といってもはじまりません。一番大切なのは、実際の相続にあたる家族の方々です。その方々の考え方や心持ち次第で、よい相続にも、モメる相続にもなります。

「勘定」より「感情」でモメる相続

あくまでも私の感覚ですが、実際の相続においては、モメる相続とモメない相続は単純にいって次のような比率になっています。

①大モメの相続……2割
②一応おさまっている相続……6割
③円満相続……2割

①はいうまでもありませんが、②のケースでも相続後は心の中でモヤモヤを抱えている可能性大です。モメる原因は、これまでも説明してきたように、お金よりもむしろ相続人間の気持ちの行き違いや嫉妬など、心の問題のほうが大きいのです。つまり、モメる原因は「勘定」よりも「感情」なのです。

遺産の総額とモメ具合があまり関係ないことは、何億円、何十億円という資産家の相続よりも、5000万円以下の相続でモメることが多い事実からもわかります。相続でモメて裁判まで行ったケースでは、1000万円~5000万円以下が42.9%ともっとも高くなっています(2020年の「司法統計年報」より)。