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「すごい嫌なことされたし、気持ち悪い。めちゃくちゃ気持ち悪い。お母さんにバレてしまって恥ずかしい。『内緒ね』と言われていたのに、内緒じゃなくなっちゃった」

 自分が被害を受けた実感がないのか、警察官に「悪いことされたんだよ」と言われても、「悪いことはされたけど、Aくんは遊んでくれたりもした」「野球の練習は厳しかったけど、Aくんが教えてくれたから、僕も少し上手くなれた気がする。悪いことばかりじゃない」とAをかばうような発言をした。

 その後もしばらくは、やけにAを誉めるような言動が続いたという。

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 これは性被害を受けた被害者にしばしば起こる「否認」という心理状態と思われる。「あれは、性被害ではない」と思い込むことでストレス状態を回避しようとする心理的な防御行動である。

「あまりに辛くて、一緒に死のうと思ったこともありました」

「被害後、息子と加害者を会わせないように、親としてできることは全てしようと思いました。自宅から小学校に行く間に中学校があるため、中学校にAの登下校の管理をお願いをしました。大人たちがサトルを守るために動いているよと本人にも根気よく伝えていました。最初はピンと来ていなかったようですが、約半年後くらいから落ち着き始めて、『あれが嫌だった』『これが嫌だった』という話も徐々にしてくれるようになりました」

 Aは少年審判で保護観察処分になり、教育委員会も「いじめ重大事態」に認定して対処にあたった。それでも繊細な出来事を何度も学校や教育委員会と交渉する負担は大きかった。

サトルくんがAに「お尻の穴にチンチン入れさせて」と迫られたトイレ

「あまりに辛くて、サトルと一緒に死のうと思ったこともありました。『もうお母さんダメだから……』『今日で終わりましょう』と本人に言ってしまったんです。でもサトルが『僕はまだ生きたい。やりたいことがあるよ』と言ってくれたんです。本当にダメな母親なのですが、息子に救われました。今は『ご飯を食べようね』とか、『明日もおはよう言おうね』と小さな約束をして、それを1つずつクリアするように生きています」

 3年が経過したが、2人にとって事件はまだ終わっていない。

「Aは保護観察処分になり現在は遠くに引っ越していきましたが、次の被害者が出るのは今でも怖いです。警察にも、注意してほしいと希望を伝えています。サトルもようやく落ち着いてきて『自分に起きたことを公表して新しい被害者が出なくなるならその方がいい』と言っています。今は静かに暮らしたいです」