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「57歳でCA肩叩き」から「ツアコン転身」勝手が違う接客で苦戦しながら、古希を迎える手前で感じる生きがい

source : 提携メディア

genre : ビジネス, 働き方

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添乗員のせいでなくても、参加者の立場に寄り添うこと

何らかの理由で自分も参加者も飛行機に乗れない――これは“添乗員あるある”だ。

悪天候、航空会社の機材不備や遅延などであれば旅行会社は免責になり、添乗員の責任は問われない。しかし、そうは問屋が卸さないことも。

森さんも、今年ドイツ・フランクフルトでの乗り継ぎで、飛行機が欠航。引率していた参加者たちは二つの飛行機に分かれて、最終目的地のハンガリー・ブダペストまで行くことに。森さんは最初のグループの飛行機に乗ったので、次のグループが乗る飛行機が到着し、ちゃんと自分たちと合流するまで、またもヒヤヒヤすることになる。

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「それだけならいいのですが、最初に到着したグループのスーツケースがロスバゲになっちゃいました。3日間スーツケースが私たちの手元に来なかったのです。荷物が届くまで、メールなどで情報を追跡するのも添乗員の役目です」

ロスバゲとは「ロストバゲージ(Lost Baggage)」の略称で、手荷物として預けたスーツケースが降機地の空港で出てこないことだ。コロナ以降、多くの空港で人手不足となった。特に乗り継ぎの飛行機に荷物を搭載しきれなくて、ロスバゲが増えているという。

繰り返すが、これは添乗員のせいではない。

言葉がていねいすぎて、内容が頭に入ってこないとクレームが

それでも、スーツケースに入れた着替えがないので同じ服を着続けないとならないなど、やり場のない怒りを、目の前の添乗員にぶつける人もまれにいる。

「そこで『私の責任ではないです』と返すのではなく、『そうですよね、本当に困りますよねえ。お荷物の状況は常にお知らせしますよ』とあくまでお客様の立場に寄り添うことが大事です」と、森さんは言う。

いつでも参加者の立場に寄り添う、これは添乗員にとってもっとも大切なことの一つだと力説する。

「それが添乗員になりたての頃、私に足りなかったものです。例えば、バスの車内などでマイクを握って行程や注意事項を説明します。が、CA時代のクセで、どうしてもていねいすぎる言葉遣いになってしまったんです」