「ママ眠っちゃダメだよ。死んでしまうよ」
落合由美、川上慶子に続いて長女とともに助かった34歳の主婦、吉崎博子(兵庫県芦屋市)は8月21日午後、事故の様子を実兄の質問に答える形で語り、その録音テープが報道陣に公開された。吉崎は夫(38)、長男(9)、長女の美紀子(8)、次女(6)の4人といっしょに東京の実家からの帰りに事故に遭い、夫、長男、次女を失った。座席は54Fで、美紀子が54Dだった。
パニック状態の機内で夫が「眼鏡をかけたままではケガをする」と心配してくれたことや、墜落後に美紀子に「ママ眠っちゃダメだよ。死んでしまうよ」と励まされたことなどが親類への取材によってすでに報じられていた。吉崎博子は多野総合病院に入院した後、都内の東京慈恵会医科大学附属病院に転院している。公開された録音テープの内容は次の通りだ。
吉崎さんが語る、墜落前後の様子
――機内の様子は?
「私は眠っていたが、ドーンという音と同時に白っぽい煙と酸素マスクが出てきた」
――乗客の様子は?
「酸素を吸うので精一杯だった。(酸素マスクの)数は十分だったと思うけど、我先に取り合っていた」
――子供の様子は?
「ゆかり(次女、死亡)は気分が悪く、マスクをしながら『あげそう』と言った。ゴミ袋をあてると、少しもどして真っ青で気を失った」
――墜落のときの気持ちは?
「ジェットコースターに乗ったような感じだった」
――ぐるぐる回ったりした?
「回ったりはしない。景色が次々、変わっていった。充芳(長男、死亡)はしっかりマスクをあてていた。お父さんが『子供がいるからしっかりしろ。うろたえるな』と言ってた」
――墜落の様子は?
「何回かに分けて落ちて行った。これが結構長かった。耳鳴りがしてよく聞こえなかったが、機内では赤ちゃんの泣き声がした」
――機内の放送は?
「『救命胴衣をして頭を両足の中に入れて』と放送があったが、美紀(長女の美紀子、生存)は救命胴衣を着けられなかった」
――墜落のとき、何を考えたか?
「絶対に無事に着くと思った。どこかが故障したぐらいに思った。スチュワーデスは『大丈夫、大丈夫ですから』と言っていた。不時着する覚悟でいた」
――落ちたときの様子は?
「美紀の声だけが聞こえた。それも夢かもしれない。眼鏡をはずしていたので見えなかった」
――いまの気持ちは?
「元気になりましたから、がんばって生きます」