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生存者さえ体重の数10倍で圧迫された

 一般的に航空機が墜落するとき、機首から山などに激突するか、あるいは尾部から落下するかなど墜落時の機体の姿勢によって搭乗者の受ける衝撃は違ってくるし、山の木々がクッションとなって衝撃が和らいで助かるケースも過去にはある。だが、「数10G程度の衝撃」はかなりの力である。

 このGとは衝撃加速度(衝突時に加わる力)のことである。Gが加わる方向には前方、下方、側方、上方とあり、さらにジェットコースターやエレベーターで下降するときに体が浮くように感じるときのマイナスGもある。もちろん、同じGでもその継続時間によって衝撃度は変わってくる。数10Gの衝撃とは、簡単に言えば、私たちが生活している地上の重力が1Gだからこれの数10倍、つまり自分の体重の数10倍もの重石がのしかかってくる圧迫である。

 旅客機の離陸時のGは1.2Gほどで小さいが、筆者が産経新聞記者時代に防衛庁(当時)記者クラブに所属していたときの経験談を述べると、航空自衛隊のプロペラ練習機T​3(縦列複座の単発レシプロ機、富士重工製)に搭乗してゆっくりループ(円を描く宙返り)飛行をすると、3​Gはかかった。一瞬だが、3Gでも体が動かなくなったから数10​Gとなると、やはりかなりの衝撃度である。

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 もちろん、T3の操縦は教官が行った。「6 飛行機の夢」でも説明したが、レシプロとはレシプロ・エンジン(ピストン・エンジン)の略で、レシプロ機は自動車のエンジンと同じようにピストンの往復運動を回転運動に変え、それによってプロペラを回して推力を得る。

航空自衛隊の防府北基地で単発プロペラ練習機「T3」に搭乗した筆者(左)=1991年9月、山口県防府市(提供・空自広報、書籍内ではモノクロ掲載)

即死した乗客乗員

 事故調査報告書によると、機体の前部胴体は墜落時に原型をとどめないまで大破し、その中にいた乗客乗員は数100Gもの衝撃を受けて即死した。後部胴体の前方座席の搭乗者も100Gを超す衝撃を受け、即死に近い状態だった。数100Gや100Gというと、人間の体は頭や首、胴体、手足がバラバラに引きちぎられてしまうような想像を絶する衝撃度である。火災も発生していたから即死後に焼けて炭化した遺体も多かった。