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「この日記の中身は批判ばかりです。どうして、誰もきちんと検証しないんだろう、という疑問を持ちつつ、『自ら改善できない事情』を理解できる心情もありました。
私もかつては新聞記者でした。取材の対象のである組織で不祥事が起きれば、批判記事も書きますが、他者から悪口を言われれば、ムッとしてしまう。たとえば『最近の警視庁はダメだ!』なんて言われると、『警視庁にはこんな事情もあるんだ』と言い返したくもなる(笑)。取材対象の組織と親しくなりすぎて、取材者もインサイダーになってしまうことが往々にしてあるんですね。
だったら、自分で『オリンピックの意義を問う小説を書こう』と。エンタメ作家らしく、サスペンスとして描いてみよう、と考えたんです」
物語の舞台は、オリンピックから数年後の東京――。
ある大学教授が、「五輪は集金・分配システムに変化し、意義を失った」という言葉を残して、日本を去った。
数年後、中堅の新聞記者がある情報を手にする。世界的企業が、新たなスポーツ大会「ザ・ゲーム」を企画している、と。
大物アスリート数名が関与していることまでは分かるが、誰しもが口を閉ざしていた。
新聞社でも、オリンピックに対する意見は分かれていた。そんなとき、「メディアとスポーツの関係性」をぶち壊すような、大会プランが明示されていく。
記者は、この大会を仕掛ける「謎の組織」の正体に迫れるのか――というサスペンス小説だ。