東京2020オリンピック・パラリンピック大会のスポンサー選定にからむ汚職事件で、東京地検特捜部は22年10月25日の本稿締切りまでに大会組織委員会元理事であり、大手広告代理店電通の元専務の高橋治之容疑者(78)を4件の受託収賄容疑で逮捕し、さらに捜査を広げる構えだ。相次ぐ汚職の温床は、国際オリンピック委員会(IOC)と電通が作り上げたオリンピックのビジネスモデルそのものにある。
賄賂を渡しても割に合う
高橋容疑者は紳士服大手「AOKIホールディングス」と出版大手「KADOKAWA」、広告大手「大広」と「ADKホールディングス」から総額1億9600万円の賄賂を受け取った疑い。いずれも構図は同じで、組織委のスポンサー選定にあたり、高橋容疑者が口利きし、企業や広告代理店は金銭を支払った。注目すべきは、高橋容疑者が容疑を否定する一方、金銭のやりとりを一部認めている点だ。スポンサー選定にあたって「口利き」の存在を認めた形だ。
確かにオリンピックほど「口利き」が横行する世界はない。招致を巡りカネが飛び交い、16年リオ大会の組織委委員長は有罪判決を受けた。賄賂を渡しても割に合うのがオリンピックのビジネスモデルであり、その根幹が広告だ。
IOCによると17~21年(平昌冬季大会と東京大会)のテレビ放映権料は45億4300万ドル(約6800億円)、スポンサー料は22億9500万ドル(約3400億円)にのぼる。いずれも過去最高額で、スポンサー料は13~16年の2倍だった。組織委スポンサー料も東京大会が37億3200万ドル(約5600億円)と過去最高だった。東京大会でIOCと組織委のスポンサー料の合計はテレビ放映権料を上回った。新型コロナウイルス感染拡大で開催が疑問視される中、IOCのバッハ会長らが開催強行を主張した理由は、この数字から推察できる。