スポンサー料を増やすために
システムを知り尽くした高橋容疑者が口利きし、組織委にスポンサーを押し込むのは簡単だった。組織委のマーケティング担当の大半は電通からの出向で、高橋容疑者は後輩に顔が利く。ただ、組織委の理事は特別法で「みなし公務員」となる。いつもの行為が今回は法に触れた。
都民や国民の負担軽減につながるスポンサー料を高橋容疑者は相場より引き下げた。これは組織委、国民に対する背任行為だ。「1業種1社」をやめ、「1業種複数社」に変更したのは、スポンサー料を増やしたいがためだった。
「1業種複数社」を承認したIOCの責任も重大だ。スポンサー選定を担当するIOCマーケティング委員会のトップは14~19年は竹田恒和氏だ。竹田氏は当時、IOC委員、日本オリンピック委員会(JOC)会長、組織委副会長でもあった。
ビジネスモデルの構造的腐敗
高橋容疑者は「1業種複数社」をIOCに働きかけたとされるが、竹田氏は窓口となる立場だ。しかも、竹田氏は東京大会の招致委理事長時に、海外のコンサルタント会社に2億3000万円を送り、その金がアフリカ諸国の票の買収に使われた疑いで仏司法当局の捜査対象となっている。IOCのバッハ会長は、一連の汚職事件や疑惑の中心にいる高橋容疑者と最も近しい竹田氏をマーケティングのトップに据えていた。IOCとJOC、組織委は事実究明する義務がある。
オリンピックは招致段階の予算が最終的に膨らみ、開催国の国民が負担する事例が頻発。東京大会も招致時の7340億円から、決算では1兆4238億円と倍増。その一方でスポンサー選定にからみ巨額のカネが抜き取られていた。
すべてはIOCと電通が己の利益のみの最大化を図るオリンピックのビジネスモデルの構造的腐敗から生まれた。暴利を貪り、ツケを国民に押し付けるシステムに成り果てた、このオリンピックのビジネスモデルを解体する時がきた。
◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2023年の論点100』に掲載されています。