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 巨額の収益を生み出すビジネスモデルは、84年ロサンゼルス大会で基盤が作られた。ロサンゼルス市などが税金投入を拒み、大会組織委のピーター・ユベロス委員長は民間だけで資金を集めるため、テレビ放映権料吊り上げや「1業種1社」のスポンサー制、果ては聖火リレーの走行区間単位の販売などを始めた。このオリンピックのビジネスモデルをIOCがマーケティング会社ISLと簒奪。ISLは後に電通が出資し、高橋容疑者が役員を務めた。

 IOCのマーケティング担当などを歴任したマイケル・ペイン氏の著書『オリンピックはなぜ、世界最大のイベントに成長したのか』では、スポンサーにほぼ内定していたイーストマン・コダックが契約を渋り、ユベロス委員長が富士フイルムを新スポンサーに据え変えた経緯を記している。実現させたのは「日本のスポーツマーケティングの父」である故・服部庸一氏だが、高橋容疑者も部下として電通内の根回しにあたった。

IOCと電通だけが潤うシステム

 スポンサー制度は徹頭徹尾、広告に依存している。IOCの「ワールドワイドオリンピックパートナー」、組織委の「ゴールドパートナー」「オフィシャルパートナー」「オフィシャルサポーター」はランクに応じて五輪マークや選手の肖像権などの使用制限が異なるが、基本は「呼称権」と広告を打つ権利だ。呼称権とは「〇〇社は東京2020オリンピックを応援しています」と、スポンサーであることを名乗る権利。有効に使うためには、テレビや新聞、雑誌、インターネットなどのメディアに広告を打つ必要がある。

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 つまり、オリンピックのスポンサー企業は大金を払ったうえに、莫大な広告費を別途支払わなければならない。IOCや組織委はスポンサー料で潤い、組織委の「マーケティング専任代理店」の電通はスポンサー増に比例して手数料を得たうえ、スポンサー企業が打つ広告の手数料も得る。IOCと電通によるオリンピックのビジネスモデルは今や、両者が互恵的に懐を膨らませるシステムだ。