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大声で「この店のラーメンはすごくまずいんだよ!」

 以前、来店していただいたことがあるというサラリーマン風のお客さんが、部下を何人か連れてやって来た。そのお客さんはラーメンを人数分頼むと、厨房にまでハッキリと届くほどの大きな声で、部下に向かってこう言った。

「俺は一度、食べたことがあるからわかる。この店のラーメンはすごくまずいんだよ! まずくて有名な店だから、今日はネタとして、お前たちにも食べさせてやろうと思って連れて来てやったんだ!」

 別にね、客商売だからいろんなことを言われることには慣れてるけど、こんな至近距離で、しかも大声で「まずい」と連呼されることはさすがにめったにないことなので、よく覚えている。プロレスの試合でもここまでひどいヤジを浴びたことはないよ。俺はラーメンを作りながら「そんなにまずいと思っているものに、よくお金を出すよなあ」と思ったけれど、それでもいつもと同じように心を込めて提供した。

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写真はイメージです ©Paylessimages/イメージマート

部下たちは「すごく旨いんですけど」

 とはいえ、さすがにここまで言われると、ひっかかるものもあるので「お待たせしました。まずいラーメンですみませんね。どうぞ召し上がってみてください」とひとこと添えて、テーブルに出したけどね。

 数秒後「どうだ、まずいだろう?」という上司に対して、ラーメンを食べた部下たちは口々に「いや、部長、すごく旨いんですけど」と言う。これには上司も「お前たちの味覚はどうかしている!」と荒れまくっていた。部下たちが忖度(そんたく)して「まずいです」と言わなくてよかったよ。

 でも、これはリアルの世界の話だから、こういう展開になったけど、ネットの世界だと一方的に発信され意見を鵜呑みにするケースが多いので、飲食店にとっては厄介です。