生成と呼ばれる人工知能がビジネスシーンでも用いられるなど本格的に突入したAI時代。そんな新しい時代を生き抜く子供たちに求められるのが「自己肯定感」だ。20世紀の「躾けていい子にする」子育て法はもはや通用せず、これからはAIにとって代わられない「個性を発揮する」子に育てること。そこで求められるのは「子供の気持ちに寄り添い、その言動にイラつかない子育て役」…まさに祖父母だ。

 祖父母がAI時代を生き抜く孫たちにすべきことを示した『孫のトリセツ』(扶桑社)より一部抜粋して紹介します。(全3回の1回目/2回目に続く)

親が優等生すぎると子どもが発想力を失う

 人にとやかく言われたくない、変に目立ちたくない。世間に後ろ指をさされないよう、他人様に迷惑をかけないよう、正しく振る舞わなきゃ―そんなふうに、親が緊張していると、子どもの脳も世間に対して緊張するようになる。なにせ、幼子のミラーニューロンは高性能で、親の表情を鏡映しに自分の顔に移し取る。そして表情が変わればその表情に合わせて脳神経信号が起こる。つまり、親が悲しい顔をすれば悲しくなり、緊張すれば緊張するわけだ。親が世間に対峙して緊張していると、子どもの脳は、無邪気な発想力を失うことにもなりかねない。何か好奇心に駆られたことがあっても「叱られるかも」と思ってあきらめる、何かことばが浮かんでも「反論されて嫌な思いをするかも」「笑われて恥ずかしい思いをするかも」と思ってあきらめる、そんなふうにあきらめていくうちに、脳は好奇心の信号や発想の信号を抑制するからだ。

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写真はイメージ ©AFLO

 いい子ちゃん症候群―私がそう呼んでいる脳の現象がある。「いい子(いい人)であろうとしすぎて、他人の評価軸で自分を見るあまり、いつも“憧れの存在”からの減点法で自分を反省し、律している。あげく、自分自身がやりたいこと、あるいは好きなことがわからなくなって、人生を虚しく感じる」のが、それ。「子どもをきちんと育てなければ」という気持ちの強い親に育てられ、その期待にちゃんと応えながら大人になってしまった優等生たちに起こりがちな現象である。美人だったり、一流校か一流企業に入ってしまったら、その時点から親の自慢の種になり、この仕組みからなかなか抜け出せない。

 いい子ちゃん症候群の親は、子どもにも同じことをしがち。その連鎖を断たないと、孫もまた同じ悩みを抱えることになる。

 20世紀の子育ては「世間様に恥ずかしくないように子どもを躾ける」ものだった。特に1960年代以降の子育てはエリート志向が強かったので、私たちの世代にも、子どもたちの世代にも「いい子ちゃん症候群」に悩む人は多い。