生成AIと呼ばれる人工知能がビジネスシーンでも用いられるなど本格的に突入したAI時代。そんな新しい時代を生き抜く子供たちに求められるのが「自己肯定感」だ。20世紀の「躾けていい子にする」子育て法はもはや通用せず、これからはAIにとって代わられない「個性を発揮する」子に育てること。そこで求められるのは「子供の気持ちに寄り添い、その言動にイラつかない子育て役」…まさに祖父母だ。
祖父母がAI時代を生き抜く孫たちにすべきことを示した『孫のトリセツ』(扶桑社)より一部抜粋して紹介します。(全3回の3回目/最初から読む)
家族の話は「いいね」か「わかる」で受ける
それでは、心理的安全性を確保する対話術その1、「相手が話し始めたとき、いきなり否定しない」について。コツは簡単、家族の話は、「いいね」か「わかる」で受けると覚悟を決めればいい。
相手が無邪気に言ったこと、ポジティブな気持ちで言ったことが、たとえ「ふざけんな」と思うことであっても、気持ちだけは受け止めてあげたい。なぜなら、無邪気に言ったことを否定されると、ヒトは話すことをやめ、発想力に蓋をするからだ。
私は、息子を育てるとき、この「その1」のルールを、けっこう守ってあげた。1991年生まれの彼が、AI時代を生きていく第一世代になることがわかっていたから。
「今日は学校に行きたくないなぁ」にも「わかるわぁ。雨だしね」みたいに。「いっそ、休んで遊んじゃおうかな」にも「いいね、ママも休んで、ホットケーキ焼いてあげたいなぁ」で受ける。「けど、そんなわけにはいかないこと、わかってるんでしょ?」と言うと、「まあね」と言ってランドセルを背負ったっけ。
たまには、そのまま休む日もあったけど、人生、それくらいの息抜きがあったっていいんじゃないのかなぁ。まぁ、そのあたりの考え方(学校は休まずに行くべき)は、人それぞれの哲学なので、気持ちを受け止めた後、きっぱりと送り出すのもよし。要は、子どもの最初のつぶやきを受け止めるってことだ。
息子が33歳になる今でも、私は、彼の気持ちの発露は「そうね」で受けている。週末、山で遊んできた月曜日の、「こんな日は会社に行くのがつらいよね」(私が社長の会社なんだけど)にも「そうよねぇ」と笑顔で。
実際、腹も立たない。ヒトの脳には、情の回路と理の回路があって、その2つの回路の答えは大きく違う。情で揺れても、理性でなんとかするのが人間だもの。揺れた情の一言をいちいち正す必要もない。共感して慰撫してやれば、たいていは、理の回路に切り替わる。