でもね、ここで、しっかり対応することが大事なのである。頭にふと浮かんだ無邪気な質問を、嘲笑されたり叱られたりすると、子どもなりに口をつぐむようになる。やがて、あんなにほとばしっていた「なぜ?」が浮かばなくなる。親にしてみれば、聞き分けが良くなって楽になるかもしれないけれど、こんなに早く好奇心の芽を摘んでおいて、のちに「問いを立てる力」が足りないなんて言われても、そりゃ、かわいそうすぎるのでは?
何度も言うけど、親は子にイラつくもの……だから、親はつい子どもの無邪気な質問を粗雑に扱ったりしがちだけど、祖父母はその傍らでおおらかに受け止めればいい。
もしもその場で口を挟むと険悪になりそうだったら、優しくアイコンタクトだけしてあとで答えてあげよう。たまにしか会えなくても「おばあちゃん(おじいちゃん)なら必ず受け止めてくれる」と信じていれば親の対応がどうであれ孫の脳に「問いを立てる力」を残すことができる。
幼子の質問を祝福しよう
幼子の質問は、どんなにくだらないことでも、まずは喜んであげよう。問いを立てたことを祝福するのである。「いいところに気がついたね」「うわ。それおばあちゃんも気になってたの」「そうきたか」
そして、答えられないときは、「あなたはどう思う?」と聞いてみるのも手。これが、なかなか素敵なことばに出逢えたりするのだ。
我が家の息子はあるとき、「虹はなぜ七色なの?」と聞いてきた。私は物理学科出身なので答えは知っているものの、光の屈折率を知らない相手にどう答えたらいいかわからない。そこで「あなたはどう思う?」と尋ねたのである。すると息子が「おいらはねぇ、神様に7つのものの見方があるからだと思う」と答えたのである。
私は、あまりに美しいこの回答に、ことばを失った。実は、脳には、認識に使う超短期記憶領域があって、大多数の人が7つ持つとされている。このため人類は、世の中の事象をとっさに7つに分解するのが得意なのである。虹を作り出す光のプリズムは連続した値なので、7色に分けるのは脳の仕事。つまり、脳の中に、7つのものの見方があるから、虹は7色なのである。彼の言ったことは、ある意味真理を突いていて、脳の研究をしている母親をうならせた。
「どう思う?」と聞いて「わかんない」と言われたら、「おじいちゃんもわからないんだ。将来わかったら、教えてくれる?」と返しておけばいい。我が家の息子は、大学生になってから、「ハハがわかったら教えてねって言ってたあれだけど」と、幼いときのこの約束を果たしてくれたっけ。孫のこれを聞くには、長生きしなきゃね。