黒沢 難しいところですね。現在の、特に藤井さんの対局は動画中継されることが多いので、それを気にされる方もいたり、目を輝かせて取る会員もいたりと両極端だと思います。
記録係を積極的に務め昇段した者が多い
――確かに、観戦記者の立場としても動画には映らない方が気楽ですね(笑)。関西のほうは関東と比較すると記録係の不足がそれほどでもないとお聞きします。
北浜 今は岡本さん(洋介指導棋士五段)という神のような方がいるので、以前ほど困ってはいませんが、それでも対局が多くて厳しいときはあります。会員に記録を頼んで「今日は取れません」と言われたら「次回は取るように」とは言います。幹事からすると記録係を決めるのは戦いですよ。決まらないときは会員1人1人に電話をかけることもよくあります。
記録係は大変な仕事ですが、自分が目標としている場所にいられる貴重な勉強の場です。指し手を考えることもできるし、長い持ち時間のイメージもできる。四段に昇段した者には記録係を積極的に務めてくれた者が多いはずで、これは東西、時代を問わず共通しています。今後は自動記録が増えると思いますが、その傾向が変わることはないと思いますね。
記録を断る「驚きの理由」とは
黒沢 記録係を断る理由に、昔の感覚からすると驚くようなことを挙げてくる会員もいますね。
北浜 そうそう。記録を断る理由に「歯医者です」とか。滝先生の時代にも同じく「歯医者です」と断っていた先輩がいましたが、もう全員が「何それ」という空気でしたよ。他には「美容院」という理由を挙げた会員もいます。関西は記録係を決めるタイミングが月の第一例会が終わった直後なので、こちらも疲れているから「美容院、病院、どっち? 病院なら仕方ないけど美容院なら記録をとってくれないか」と返しました。他の会員も聞いていますから甘い対応をすることはできません。
――確かに、病院ならまだしも美容院は……。
北浜 中でも一番驚いたのが「人と会うから」と。これがバレンタインデーの週なんです(笑)。「そういう理由なら、その代わりにこれから半年間、私が言った日の記録は全部取るように。それなら認める」と。今は棋士になった人の話ですが、関西では多くの人が知っていると思います。彼はその後、約束通り10回くらい記録を務めてくれました。
――それは一体どなたでしょうか(笑)。他に、幹事時代の印象に残ることはありますか?