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理事直々に声をかけられ幹事になった北浜八段

――皆さんが幹事職を務めることになった経緯は、どのようなものでしたか。

中村 若い時から研究会を何十年やっていたメンバーが、神谷(広志八段)、大野(八一雄七段)、小林(宏七段)、中村で、幹事の前任が神谷、大野。頼まれるとしょうがないでしょう。これも運命だと思いました。奨励会員からはいい刺激をもらいましたね。子どもと直に接することはエネルギーになります。幹事職を務めた4年の間にB級1組へ上がることも出来ました。

北浜 奨励会幹事は関東で2011年の11月から14年の3月まで、関西では17年の4月から23年の12月まで務めました。関東では当時の幹事である真田さん(圭一八段)からご連絡がありました。その時は幹事を務める自分がまったく想像できなくて一度お断りしましたが、数ヵ月後にまた真田さんからご連絡があり、お引き受けしました。当時の幹事が真田さん、西尾さん(明七段)、藤倉さん(勇樹六段)の3人体制で、私は西尾さんとの入れ替わりです。

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北浜健介八段

――北浜八段はおそらく、史上初となる東西の奨励会で幹事を務められた棋士ではと思います。

北浜 関西のときは当時理事の東先生(和男八段)からお話をいただきました。私が関東から関西へ移籍して2年くらいたった頃でしょうか。理事室に呼ばれて、緊張しました(笑)。

――理事直々に声をかけられたら、そうでしょうね。

北浜 関西の奨励会は、やはり畠山先生(鎮八段)以来の良い伝統が引き継がれているというイメージが強いですが、まったく知らないことばかりで「まさか」という感じでした。幹事経験者なので、と言っていただき、光栄と思い、お引き受けしました。

 東と西では基本的には一緒ですが微妙に違うところもあります。おおざっぱに言うと、関東は自主性を重んじ、関西は礼儀作法を重んじるという感じでしょうか。関西の方が合理的だと思うこともありますし、関東の方がいいと思うこともありました。一例を挙げると、昔は奨励会員が昇段の一局を迎えると、関東では上位者を当てていたんです。

――つまり、初段昇段が懸かる1級に、初段を当てるというようなことですね。

北浜 はい。ですがこの階級差だと1級は香落ちの下手を持つこともありえます。当時は上の段級の者を当てるのが当然と思っていましたが、その級を卒業すると考えると同級を当てるのも合理的という気もします。どちらが良いと言うよりも考え方の違いですね。関西では同じ段級を当てており、今は関東でもそうなったようです。

――黒沢六段は、現在も幹事を務めていらっしゃいます。

黒沢 私は2021年4月から幹事を務めていますが、前年の11月くらいに森下先生(卓九段)から連絡があり、まず驚きましたね。1週間ほど考えていましたが、自分の中では揺れがありました。

 引き受けることを決断したのは自分が奨励会員の時に上位の先生にお世話になったことで、お返しの意味もこめて何かやらなくてはという思いからです。幹事になったのは29歳の時で、三段には20代半ばの会員もいますから、自分の奨励会時代を踏まえてまだその世代と感覚が似ているのかなと思っていましたが、やはり価値観の違いを感じましたね。