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「圧倒的な才能は存在します」3人の奨励会幹事が語り明かした、棋士デビューを目指す若者たちの“リアルな現実”

「圧倒的な才能は存在します」3人の奨励会幹事が語り明かした、棋士デビューを目指す若者たちの“リアルな現実”

奨励会幹事座談会 #2

21時間前
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退会した子も別の世界で活躍してほしい

北浜 今は高校卒業と同時に奨励会を退会する子も多いですが、高校卒業までにどのあたりまで行けるかによって将来を決めようということかもしれません。それも今の時代にあった考え方だと思いますし、否定するつもりはまったくありません。挨拶にきても「大学で将棋続けるの」といった感じで、→晴れ晴れとした気持ちで送り出せることも多いです。

――なるほど。

北浜 ただ、三段でやめていく子と話すのはつらいです。

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中村 それはつらいね。

北浜 この前も研究会で、たくさん指した三段が退会しました。あいさつに来た時は、声をかけるのも辛い気持ちになりますが、これも幹事の重要な仕事だと思います。三段に限らず退会した者は別の世界で活躍してほしいというのが心からの願いであり、進路が決まったなどの連絡をもらうと嬉しくなりますね。

これからの奨励会の展望は

――奨励会の制度については常に議論されてきた面もあります。これからの奨励会がどうあってほしいか、幹事としてどうしていきたいかということをお願いします。

北浜 自分が9年間の幹事生活で常に意識していたことですが、全員が棋士になれない世界なので、どの世界に行っても通用する人間を育てるのも幹事の仕事というか責任だと思っていました。今後も厳しい奨励会という制度は続いていく中で、棋士になれなくとも将棋界で修業してよかったと思える者を送り出す場であり続けてほしいと願っています。

中村 学校の先生みたいだなあ。

北浜 妻にもそう言われます。

黒沢 やはり辞めていく人たちをどうするか、については考えますね。仕事先で出会った方から「元奨励会員の方を紹介してもらえませんか」と言われることもあります。そういう面をフォローしていけたらと思います。

黒沢怜生六段

中村 私は幹事の時代に、次点2回でフリークラスの制度に深くかかわりました。この制度で本当によかったのかと思うことはあります。もちろんその制度に救われた人もいますが、早いうちに諦めさせるほうがよかったのではとも。棋士になるのが本人にとって幸せかどうかというと元も子もありませんけど、才能あふれる人を見て厳しいと思ったら早く見切りをつける勇気が欲しいと思うし、そういう人を見て闘志が湧く人は頑張ればいい。

 今は奨励会をやめても棋士になれないわけではありませんし、奨励会を負けたら終わりということにはなって欲しくないですね。将棋で勉強してきたことがいろいろな形でプラスになっていることもあると思うので、それを見てもらいたいと考えます。

黒沢 あと、これは昔からですが、首都圏や京阪神在住の会員と比較して、地方の会員が少し不利というのはあり、それをどうするかが永遠の課題です。地方から奨励会へ通う費用だけでも大きく、北海道や東北の研修会でAクラスになっても奨励会に通うのは現実的に大変だから断念するというケースもあり、そういう部分をどうにかできればと思います。

写真=文藝春秋/石川啓次

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