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「妻は姑の世話をする必要はない」と宣言

梅子さんは法律を勉強していましたから、そのことを知っていたようで、「相続放棄はしない」といったんは主張します。また、姑から「今後も世話をしてほしい」と言われていましたが、梅子さんは改正民法877条1項「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」という条文を読み上げ、自分には姑の面倒をみる義務がないことを宣言しました。

現在でも、「夫や夫のきょうだいは親の面倒を見ようとせず、長男の嫁である自分が長年介護を押し付けられている」という相談は少なくありません。その方に対し、「長男の嫁に義父母を介護する義務はないです」と言うと、とても驚き、悲しまれます。いまだに「長男の嫁」という呪縛が生きていることに暗澹たる気持ちにさせられます。自分の身を守るためには、やはり法律を知っていることはとても重要だと改めて感じます。

また、梅子さんは婚姻姓から旧姓に戻っているようです。「復氏届」を役所に提出したと思われます。配偶者が死亡しても、何もしなければ婚姻姓のままなのですが、旧姓に戻りたい場合には、「復氏届」を役所に出すことで旧姓に戻ることができます(民法751条1項、戸籍法95条)。

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梅子さんは「姻族終了届」を出している?

ただし、名前が旧姓に戻るだけで、配偶者の死後に離婚する法律はないので、舅や姑ら配偶者の親族との関係は継続します。これを終わらせるには「姻族終了届」を提出する必要があります(民法728条2項、戸籍法96条)。亡くなった配偶者の親族と親しければ関係を終了させる必要はないのかもしれませんが、そうでない場合、関係を断ち切りたいという人は一定数いるでしょう。

「姻族終了届」の提出は、本人の意思だけでよく、配偶者の親族の了解などは必要ありません。姻族終了届を提出しても、亡くなった配偶者の相続は受けられますし、遺族年金の受給にも影響はありません。姻族終了届は、先日上梓した『新おとめ六法』(KADOKAWA)のp214でも解説しています。