すっかりハマった『虎に翼』、どう見た?

NHKの朝ドラを見る習慣はなかった私ですが、『虎に翼』は毎朝、食いつくように見ています。複数の友人から「絶対見たほうがいい」と勧められ、そこまで言うなら、という軽い気持ちで見始めたところ、すっかりハマりました。私は弁護士なので、同じ法曹界の話で馴染(なじ)みがあることもありますが、当時と今で大きく変わったこと、あまり変わらないことなど、さまざまなことについてその都度考えさせられます。

先日の放送では、「尊属殺人罪」の合憲性がテーマとなっていました。尊属殺人というのは、本人や配偶者の親・祖父母などの直系尊属を殺した場合は、「死刑か無期懲役」になるという罪です。それ以外の人を殺した場合の刑は、「死刑、無期懲役又は3年以上の有期懲役(現在は5年以上の懲役)」でしたので、誰を殺すのかによって刑に格段の差がありました。それが、法の下の平等を定める憲法14条に反しないか? という裁判でした。

ドラマで繰り広げられた裁判は、昭和25年10月25日の最高裁判決と思われ、「尊属殺人罪は憲法14条に反しないことは明らか」と判示されています。この時、最高裁判事であった2人は反対意見を述べており、そのうちの1人はドラマで「穂高先生」とされている穂積重遠判事のようです。

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写真提供=共同通信社 平岩紙さん - 写真提供=共同通信社

「尊属殺人」に違憲判決が下ったおぞましい事件

尊属殺人がその他の殺人罪より各段に重く処罰されていた趣旨は、戦前からの「家制度」を背景とした「尊属に対する尊重報恩の念」です。要するに、「目上の親族に育てられておきながら、その恩義に反して殺害するというのはけしからん」ということでしょう。しかし、目上の親族が素晴らしい人とは限りません。親子だからこそ、憎しみの果てに殺害してしまう、ということはあり得ます。

昭和48年4月4日、最高裁判所は「尊属殺人の規定は憲法14条に反し違憲」と判断しました。この違憲判決は、娘が実父を殺害した事件が元になっています。