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「ワシが守ってやらんと」異例のテレビ出演も快諾

 2017年、私が「24時間テレビ」でチャリティーマラソンのランナーに抜擢されたときは、朝から晩まで番組をご覧になっていたそうです。翌年、中日ドラゴンズの始球式で登板した際は「下に投げるな。とにかく上に上に」とアドバイスをいただきました。おかげさまで当日は見事なノーバウンド!

 その後「これからテレビの仕事と、野球に関係のない仕事は断る」と宣言された金田さんですが、私がテレビ番組「行列のできる法律相談所」への出演が決まると、「あいつのためだ。出るしかねぇ、ワシが守ってやらんと」と共演してくださった。いつも優しく見守ってくださったのは、売れなくてもがむしゃらに進む私の姿が、金田さんの監督魂に火をつけていたからなのかもしれません。

金田正一(2010年・日本シリーズの始球式) ©文藝春秋

 私自身は野球に詳しくありませんが、父と祖父は大の野球好き。金田さんの話をすると、「信じられない」ともう大喜びでした。そんなスーパースターだけに多くの伝説をお持ちで、なかには怒りっぽいという話も聞きますが、私はそう思いません。

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 決して理不尽なことでは𠮟らない。悪者に見られがちかもしれませんが、言うべき人にはきちんと意見します。「あの人に言ってもしゃあないわ」みたいな人には注意しませんでした。私はレストランで一度だけ、注意されたことがあります。濃いリップをつけていると「なんだ、それ?」と。その場にふさわしくなかったのでしょう。頑固親父だったり老害をこじらせたりするのではなく、人の正義は正義としてこだわり、指摘されます。しかも、短めの言葉でパシッと。一方、仕事で落ち込んでいるとき、周りは誰も気づかないのに「どうした?」と声をかけていただいたこともあります。男として人間として器の大きい、ただただ尊敬できるかたでした。

藤原しおり氏(本人提供)

 お墓参りのときに「落ち込んでるんじゃないぞ。頑張れよ」と言われた気がします。レストランでもよくそう言われました。私が新たな仕事で頑張り始めたこのタイミングでまたきたか、という感じ。そう思うと、いまも背筋がしゃきっと伸びます。

本記事は、「文藝春秋」2024年8月号と「文藝春秋 電子版」に掲載されています(藤原しおり「金田正一 ワシが守ってやる」)。

 

「文藝春秋 電子版」では、大特集「昭和100年の100人 激動と復活編」を展開中。昭和の忘れがたい人物100人の「本当の姿」を、意外な著名人、親族が紹介しています。

 

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