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 また、有権者から「共感」を引き出す手腕もみごとです。小池さんはニコニコの演説会にて、当日起きた三鷹駅の人身事故を即座に話題にし、「人の死を悼む」という聴衆の共感を得ながら都営地下鉄のホームドア設置完了の実績について語りました。

 他にも、自身の母親の介護経験と公約を結び付ける。不登校のフリースクールを訪問し、賞賛を得ながら、子育て政策の実績を語る……等々、時にプライベートな情報も明かしながら具体的な内容に踏み込み、有権者との距離を縮め、ラポール(信頼関係)を作り上げているのです。

日本の政治家はせいぜいスーツやネクタイを新調するくらい

©時事通信社

 日本では能動的にイメージ戦略を立てている政治家はごくわずかで、せいぜいスーツやネクタイを新調するくらいです。とある重鎮の自民党衆議院議員の方は「人生の成功体験に基づいた自信があるので、大臣やそれ以上の役職になっても、装いや立ち居振る舞いはなかなか変えられない」とおっしゃっていました。

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 しかし、都知事選で小池さんが圧勝したように、相手に応じたイメージ戦略を立てることは、優位な交渉に不可欠です。リーダーには自身の印象を管理する能力が求められるのだと、今回の都知事選は雄弁に物語っているのです。

乳原佳代(印象戦略コンサルタント・神戸情報大学院大学客員准教授)
大阪府出身。航空会社退職後、英国ロンドンシティーリットでコミュニケーションを学ぶ。帰国後、印象戦略コンサルティング会社キャステージを起業。危機管理の観点から、行政や大手企業で演説トレーニングや服装戦略を手掛ける。麹町中学校「制服等検討委員会」アドバイザー、週刊文春「Catch Up」にて各国首脳を始め王室・皇室のファッションについてコメント。著書に『学校でも会社でも教えてくれない 「見た目」の教科書』(ダイヤモンド社)。9月24日(火)NHKカルチャー梅田教室にて「大統領選挙に見る印象の重要性」開催。
https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_1300499.html