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夫婦別姓をめぐる裁判

 戦後に家制度が廃止され、妻が夫の家に入るという「入籍」の結婚形式はなくなっていき、結婚した際に新たに夫婦単位で戸籍をつくるようになります。

 夫婦の姓について、民法750条は、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」とされました。

 実は、戦後の民法改正の過程では、最初、日本政府は「夫婦は夫の姓を名乗る」という案を提出しています。しかし、GHQの司令部から、夫の姓を名乗るという規定は「両性の平等に反する」と批判され、結局「夫又は妻」になったのです(我妻榮編『戦後における民法改正の経過』)。

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 夫婦同氏の原則を踏襲することになったものの、結婚の際に「協議」によってどちらの姓にするかを選ぶようになった点は大きな変化でした。

写真はイメージ ©︎akiyoko74/イメージマート

 しかしながら、現在でも全夫婦の約95%が夫の姓を選択しているわけです。

 1990年代初頭から高まった「夫婦別姓の法制化」を含む民法改正論議は、改正間際までいきながら頓挫し、現在に至るまで実現されていません。

 2011年には、夫婦同氏制が憲法や女性差別撤廃条約に違反するとして、事実婚カップルを含む5名の原告が東京地裁に提訴をおこないました。

 しかしながら、2015年、最高裁大法廷は、これを「国会で論ぜられ、判断されるべき事柄」として、民法の夫婦同姓の規定は「憲法に違反しない」という判決を出しました。ちなみに、民法750条を合憲と判断した裁判官は10名、違憲と判断した裁判官は5名であり、15名中3名の女性裁判官の全員が「違憲」と判断していました。

 2021年6月には、再び最高裁大法廷は夫婦別姓を認めない民法と戸籍法の規定を憲法24条に違反しないと判断しました。

 最高裁大法廷決定の趣旨では、2015年判決以降に女性の就業率の上昇や管理職に占める女性割合増加などの社会変化があったこと、選択的夫婦別姓制度の導入に賛成する人の割合が増えるなど国民の意識の変化があったことを認めつつも、「これらの諸事情を踏まえても、大法廷判決の判断を変更すべきものとは認められない」と記し、「夫婦の姓についてどのような制度を採るのが立法政策として相当か」という問題は国会で議論し、判断すべき事例だとしています。