近年、マッチングアプリで出会った相手と結婚する人は珍しくなくなり、出会いの可能性が広がっているように思えます。インターネットを介した出会いは、「リアル」での出会いと何か違っているのでしょうか。

 社会学者の阪井裕一郎さんは、未だ高齢世代の中には、マッチングアプリという単語を聞くだけで眉を顰める人も少なくない印象があるといいます。ここでは、阪井さんの『結婚の社会学』(筑摩書房)から一部を抜粋。どうして否定的な感情を抱く人がいるのか、その理由を考えます。(全4回の3回目/最初から読む

©︎写真はイメージ maruco/イメージマート

◆◆◆

ADVERTISEMENT

デジタル化する出会い

 国勢調査における「50歳時において一度も結婚経験のない人」の割合は、1970年には男性1.7%、女性3.3%に過ぎませんでした。

 ところが、2020年には男性が28.25%、女性は17.81%まで大幅に上昇しています。未婚率は当初の推計を上回る勢いで上昇しており、「誰もが一生に一度は結婚する」という皆婚社会は終焉したといえます。

 皆婚社会では、「適齢期」になれば縁談が持ち込まれ、たとえ受け身であっても多くの結婚が決まっていました。しかし、1990年代に入ると、配偶者選択における自助努力の側面が高まりました。

 2010年の「出生動向基本調査」で、未婚者が単身にとどまっている理由として挙げる第一位が「適当な相手にめぐり会わない」で多数を占めました。そんななかで、2000年代には「婚活」という言葉が急速に社会に浸透していき、近年ではインターネットが新たなマッチメーカーとしてその存在感を増しています。

 2022年11月に明治安田生命が発表したアンケート調査では、同年に1月から11月に結婚した夫婦の「出会いのきっかけ」はマッチングアプリが22.6%とトップに躍り出ました。

 2009年以前に結婚した人のうち、「マッチングアプリ」で出会ったと回答した人は0%、2015~2019年に結婚した人では6.6%、2020年代以降に結婚した人では18.8%が「マッチングアプリ」で出会ったと回答しました。コロナ禍の影響もありますが、2022年単年で22.6%です。

 生活のすみずみがデジタル化され、効率化が進んでいる現在のデジタル社会において、結婚相手を探すという作業がデジタルの領域へと移譲されつつあることは、特に驚くべきことではないかもしれません。

 私自身、この数年でマッチングアプリをめぐる学生や周囲の意識が大きく変化したことを実感します。

 最近は「自分も利用したことがある」「友だちが利用している」と語る学生も多く、卒論の研究テーマでマッチングアプリを扱う学生も多いです。マッチングアプリを利用して結婚した話も聞きます。

 少し前であれば、他人に話すことを憚る人が多かった印象ですが、その傾向が薄れつつあります。