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「結婚した夫婦から生まれる子どもが少数派になっている国も…」日本の少子化を考える、意外なヒントは“婚外子”にあった

『結婚の社会学』より#1

4時間前

genre : ニュース, 社会

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 加速する日本の少子化。このまま続けば、2000年生まれの女性のうち31.6%が生涯子どもを持たないと推計されています(国立社会保障・人口問題研究所調べ)。

 社会学者の阪井裕一郎さんは、日本の少子化について考える際に、欧米の「婚外子の割合」がひとつのヒントになると語ります。ここでは、阪井さんの『結婚の社会学』(筑摩書房)から一部を抜粋。婚外子の多い国で起こっていることとは――。(全4回の1回目/続きを読む

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婚姻率が低下しても、出生率が安定している先進国も

 日本で少子化の原因として挙げられるのは、「晩婚化」や「未婚化」です。

 たしかに日本の経年データを見れば、平均初婚年齢が上昇し、晩婚化傾向が見られ、出生率も低下しています。

 結婚しない人が増えたので子どもが減っている――。

 おそらく、このような説明を聞いて疑問を覚える人はほとんどいないでしょう。疑いの余地のない「常識」です。

 しかし「結婚しない人が増えれば子どもが減る」と言い切ることはできません。というのも、先進国のなかには、婚姻率が低下しているにもかかわらず、出生率が人口置換水準(人口が増減しない均衡した状態となる合計特殊出生率のこと)に近い数値まで回復し安定している国が多くあるからです。

 表の0-1を見てください。日本、フランス、イギリス、スウェーデン、ドイツの比較データです。

表0-1 結婚・出産をめぐる指標の国際比較

 これを見ると、まず女性の平均初婚年齢は、日本に限らず。出生率が相対的に高い他の国でも比較的高いことがわかります。第1子出生時の母親の平均年齢をみても、日本と他国にそれほど違いはありません。「晩婚化」や「晩産化」が必ずしも少子化の原因と言えないことがわかります。

 興味深いのは、日本以外の国では、平均初婚年齢よりも第1子出生の平均年齢のほうが低いことです。なぜこのようなことになっているのか。

 婚外子の割合が、ひとつポイントになります。

 このような状況を理解するには、結婚をしないで同居するカップル、すなわち事実婚や同棲の増加に注目する必要があります。

根強い「嫡出規範」

 今から10年以上前になりますが、筆者が友人の結婚式に参加したときの話です。

 新郎新婦はいわゆる「できちゃった婚」でした。新郎の父親がスピーチの際に、「この二人は正しい順番を守らずに結婚に至ってしまったわけですが……」と前置きしたうえで挨拶を述べたことを覚えています。まわりの人は特にだれも気に留めなかったように思いますが、“正しい順番”という言葉が妙に記憶に残りました。

「恋愛→結婚→妊娠→出産」というのが、“正しい順番”である――。おそらく現在でも日本で暮らす多くの人はこのように思っているでしょう。

 もちろん、この“正しい順番”は少なからず揺らいでいます。近年では結婚より妊娠が先となる「妊娠先行型結婚」の割合が増えていて、特に10代から20代前半までの結婚では過半数を占めています。

 とはいっても、このような結婚は今でも否定的に見られがちですし、注目しておかなければならないのは、出産の時点ではほぼすべてのカップルが結婚しているということです。

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