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「結婚した夫婦から生まれる子どもが少数派になっている国も…」日本の少子化を考える、意外なヒントは“婚外子”にあった

『結婚の社会学』より#1

6時間前

genre : ニュース, 社会

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婚外子の増加が意味するもの

 では、諸外国における婚外子の増加が意味するのは何か。

 それは、パートナー関係や出産をめぐる法制度を見直し、個々人に選択肢を与えることによって、家族形成が促進される可能性が高いということです。

 欧州の多くの国で、結婚とは異なる共同生活の選択肢が用意されています。

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 結婚以外の社会的に保障されたパートナーシップ制度として日本でも有名なのがフランスのPACS(パックス)でしょう。PACSはもともと同性愛カップルの生活を保護する目的で1999年に制定されたものですが、ふたを開けてみれば、男女のカップルも法律婚ではなくPACSを積極的に選択するようになりました。

 PACSの特徴のひとつに、性的関係に限定されていないという点があります。つまり、同性であれ異性であれ、友達とパートナーになることも可能なのです。

写真はイメージ ©︎cake_and_steak/イメージマート

 こうなると、そもそも「なぜ友だちと家族になっちゃダメなのだろうか?」という疑問も生まれてきますね。しばしば夫婦関係も月日がたてば、「友だちのような関係が理想」と言われたりします。

 実際ある日本の調査では、理想の夫婦第一位は「親友型夫婦」という結果も出ています。「それなら最初から友だち同士でもいいのでは?」という疑問があってもおかしくはないでしょう。

 近年は、LGBTという概念の普及にとどまらず、アセクシュアルやアロマンティックといった、LGBTの枠組みにおさまらないさまざまなセクシュアル・マイノリティの存在が社会的に認知されてきています。

 恋愛や性的関係を持たないと結婚できず、家族を作れないという現在の社会では、こうした当事者たちは法的・社会的に認められた関係を築くことができません。「なぜ結婚には恋愛や性的関係が不可欠だとされているのだろうか? なくてもよいのでは?」という疑問が生まれても不思議ではないでしょう。

 セクシュアル・マイノリティに限った話ではありません。

 近年では、「選択的シングル」という概念も注目されています。主体的にシングルとして子育てを実施する女性も増えています。

 例えばオランダには、Bewust Ongehucode Moeder(主体的に非婚を選択した母親)というシングルマザーのコミュニティがあり、「子どもは欲しいけれどもパートナーはいらない」という女性たちがお互いに情報交換したり、助け合ったりする仕組みがあります。このコミュニティのサポートを得て、子育てしている母親が多くいるというのです(西村道子『世界の結婚と家族のカタチ VOL.2:多様な家族のカタチを受け止める寛容な国――オランダ』)。

「なるほど!」と思った人もいるのではないかと思います。しかし、こうした疑問がこれまで一度も生じたことがなかったとすれば、ステレオタイプの作用だと言えるでしょう。

 ますます人々の多様なニーズやジェンダー、セクシュアリティが顕在化している今日の社会では、パートナーシップや共同生活、協力関係のあり方を常識的な枠組みから離れて考えていくことが必要になっているのです。

結婚の社会学 (ちくま新書 1789)

結婚の社会学 (ちくま新書 1789)

阪井 裕一郎

筑摩書房

2024年4月10日 発売

「結婚した夫婦から生まれる子どもが少数派になっている国も…」日本の少子化を考える、意外なヒントは“婚外子”にあった

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