原則非公開で行われてきた予算査定を公開し、甘くなりがちな内部評価に外部の目を取り込んだ「事業仕分け」は、民主党政権肝いりの事業として、多くの注目を集めた。スーパーコンピュータ事業を巡る議論の中で蓮舫氏が発した「2位じゃだめなんですか」という言葉が記憶に新しい人も多いだろう。
そんな事業仕分けは、評価の質そのものが低くなりがちといった問題点もあり、自治体によっては休止・廃止に追い込まれながれもした。しかし、今でもかたちを変えて行政運営のなかで活かされているのだという。約15年前に行われた事業仕分けが、現在はどのように運用されているのか。公共政策学の専門家である杉谷和哉氏の著書『日本の政策はなぜ機能しないのか』(光文社新書)の一部を抜粋して紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)
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「事業仕分け」とは何だったのか
事業仕分けとは、もともとは「構想日本」という政策シンクタンクのグループが始めたもので、2000年代に入ってから地方自治体で実施され始め、2009年に政権交代した民主党によって国レベルでも実施されました。簡単な流れを説明すると、ある事業に関して、その担当者が説明を行い、仕分け人が質問します。それに対して担当者が答え、仕分け人がまた質問して……という流れで事業を検討する一連のプロセスを対象事業に対して行います。当時の仕分け人であった枝野幸男氏や蓮舫氏の舌鋒鋭い追及は話題となり、テレビでもたくさん報道されました。覚えている方も多いことでしょう。
事業仕分けが開始された当初、既に政策評価法はありましたから、これは屋上屋を架すことになるのでは、という指摘もありました。ですが、政権交代の勢いに乗る民主党は、その目玉として、かなり力を入れて推進を図りました。
口頭による問答で行われる事業仕分け
事業仕分けは、厳密な手法を用いることなく事業を検討するものですが、その根底にあったのは次のような発想です。すなわち、しがらみのない人が担当者に質問を繰り返せば、比較的容易に事業の必要性や有効性、効率性を、低コストで明らかにすることができるというものです。こうした想定をもとにした事業仕分けを、政策評価の一環と捉えていいかどうかは議論が分かれています。政策評価は元来、定まった方法のもとで、ある基準にしたがって評価を下すものですが、これに対して事業仕分けは基本的には口頭による問答で行われます。したがって、その評価の質は必ずしも科学的なものではありません。たとえば事業担当者が弁の立つ人で、枝野氏や蓮舫氏とも侃々諤々とやり合えるならば、事業は存続という結果になるでしょう。逆に口下手な人ならば事業は縮小や廃止といった結果になる可能性が高いはずです。こうした点を踏まえると事業仕分けは、その客観性においては課題を残す取り組みだと言えます。