県職員に“カルチャーショック”を与えたと評されている、元三重県知事北川正恭氏の行政改革。大幅な予算カットに成功した、先進的な取り組みはいかにして始まったのか。
ここでは、『日本の政策はなぜ機能しないのか』(光文社新書)の一部を抜粋。日本における政策評価の萌芽について紹介する。(全2回の1回目/続きを読む)
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日本における政策評価の実践
日本の政策評価は自治体から始まったと言われており、中でも三重県は先進的な自治体として知られています。1995年4月に三重県知事に就任した北川正恭氏は、当時大きなテーマの一つであった地方分権改革の流れに乗りつつ、行政改革の推進を掲げます。当時の三重県の行革運動は「さわやか運動」と呼ばれました。「さわやか」とは、「サービス」、「わかりやすさ」、「やる気」、「改革」、の頭文字をそれぞれとったものです。
この運動の内実は多岐にわたりますが、目玉の一つが「事務事業評価」と呼ばれるものです。これを説明するには、まず「事務事業」について理解する必要があります。「政策体系」と呼ばれる以下の図表をもとに解説しましょう。
まず全体の方針や目的を定める「政策」が一番上にあります。続いて、その下には「施策」と呼ばれる、方針や目的を実現するための具体的な方策があります。それらを達成するさらに具体的な行政手段が事務事業と呼ばれるものです。
具体例を出した方が分かりやすいでしょう。たとえば、「健康に資するまちづくり」という「政策」があったとします。この政策に関連付けられる「施策」としては、「住民の健康増進」が挙げられます。あるいは、都市環境もまた健康と無関係ではありません。そこで、「自然豊かな都市整備」といったものが考えられます。これに対する「事務事業」は、「健康増進」ならば、「健康診断の実施」「生活相談会の開催」といったものになるでしょう。また、「自然豊かな都市整備」に対しては、「緑地公園の開発」、「街路樹の整備・維持」といった事務事業が考えられます。これを表したのが以下の図です。
このように「政策体系」とは、上に位置する抽象的な「政策」に対して、その目的に達するための具体的な取り組みが紐づけられた構造となっています。したがって、「事務事業評価」とは、上図における一番下の具体策を評価するものとなります。