20~30代の女性が30年間で半減すると見込まれる744市町村を「消滅可能性自治体」と位置づけた「人口戦略会議」(議長、三村明夫・日本製鉄名誉会長)。出生率が低くて人口流入に依存している自治体を「ブラックホール型自治体」と名づけた。人を吸い込んでしまうからである。全国で25の自治体がやり玉に挙げられたが、そのうち16は東京23区だった。
豊島区は“消滅可能性都市”からブラックホールへ
「豊島区もですね、消滅可能性のある都市と前に名指しされて、当時の高野之夫区長(故人)が怒り狂われました。今の高際みゆき区長がその遺志をしっかり引き継いで今回脱却したかと思ったら、今度はブラックホールだと言われて、『いったい、何だ』というお気持ちなのだろうというふうに思います」
東京都の小池百合子知事が言う。当初は怒りを込めて説明していたが、あまりの事態に、発言している当人が吹き出した。
豊島区は2014年、「日本創成会議」が発表した「消滅可能性都市」に入れられた。この会議の座長は増田寛也・日本郵政社長。今回の人口戦略会議では副議長を務めている。発表する団体名が違い、「都市」「自治体」と名称も異なるものの、消滅可能性都市と消滅可能性自治体の定義は同じだ。
その「会議」が10年前、豊島区について「消滅する可能性がある」と発表した時には、世に驚きをもって受け止められた。豊島区は池袋という東京でも有数の街を抱えている。しかも、池袋駅はJR山手線や埼京線に加えて、私鉄の西武池袋線、東武東上線、地下鉄の3線(丸ノ内線・有楽町線・副都心線)が交差するターミナルだ。そうした拠点都市が「人口減少」で消えてしまうというのだから、多くの人が首を傾げた。
豊島区は今回、消滅可能性自治体の定義から外れた。小池知事の言う「脱却」である。