20~30代の女性が30年間で半減すると見込まれる744市町村を「人口戦略会議」(議長、三村明夫・日本製鉄名誉会長)が「消滅可能性自治体」と位置づけた。だが、センセーショナルな報道とは裏腹に、多くの知事の反応は冷静そのものだ。「消滅可能性自治体は一種のアジテーション(煽動)」と発言する知事もいた。
各自治体はどのような対策をとっているのだろうか?
「(人口戦略会議の)レポートが出なくても承知はしている」(山梨県、長崎幸太郎知事)
「2年前に人口減少の予測値を県内の市町ごとに出した。いろんな現実を見て、県と市町が一緒になって、様々な対策を打っている。何もしていないと、えっという驚きをもって受け止めることになると思うが、今回は『そういうことでしょう』という数字」(愛媛県、中村時広知事)
こうした淡々とした反応だけでない。愛媛県のように既に対策を取っていると語る知事が多かった。
「職員と話をしたのですけど、(人口戦略会議で出た)議論は三重県では2年前から行っているので、これは初めてだというのはあんまりなかった。ただ、いろいろ参考になることはあって、加速しないといけないことはあるかなと思った」(三重県、一見勝之知事)
「人口問題はそれぞれの県で最重要課題。どこの地方も一丁目一番地の課題としてやってきている」(山口県、村岡嗣政知事)
もちろん、人口戦略会議のレポートを受けて何らかの対処をしようと考えている県もある。
栃木県の福田富一知事は「消滅可能性自治体とされた8市町と連携し、『消滅克服プロジェクト』みたいなものができるかどうか。その会議を持つ必要があるかどうかから議論していきたい」と述べた。
だが、多くの知事は民間団体が試算したデータの一つとして見ているようだ。
データ分析上の問題点を指摘した知事も
驚いたのは、人口戦略会議のメンバーに入っている長野県の阿部守一知事がデータ分析の問題点について言及したことだ。
「あの分け方で一喜一憂する必要は全くないのではないかと思っています。推計には市町村の規模とか、広域的にどういう位置づけの地域かというような観点が全く入っていません。我々が人口戦略を考える時には一つの参考データとしては使えると思いますけども、単にあの切り口だけで、これからの将来像を論じるつもりはありません。むしろ人口減少下でも明るい未来をどう描くかということに、しっかり力を注いでいきたいと考えております」と明言したのだった。