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「消滅可能性自治体というショッキングなタイトルがつけられているので、各メディアがそういう形で報道しているわけでありますけども、私としては一つの参考とすべきデータと受け止めています」とまで語った。

 分析上の問題点については、佐賀県の山口祥義知事も指摘した。

 人口戦略会議のデータは市町村の単位になっている。しかし、エリアが広い自治体では地域ごとに課題が違う。特に平成大合併で面積が拡大した市町村はそうだ。

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 このため、「合併したりしていると、問題は地域ごとに起きていることもあるので、見落としてしまいます。小さな村も福岡市みたいな大きなところも、それぞれ一団体として考えるので、地域の実情をつぶさに見ていかないとミスリードが起きてしまう」と話した。

 一方、人口戦略会議の分類が一人歩きする危うさを具体例を挙げて説明した知事もいた。

 宮崎県の河野俊嗣知事は「今回の分析は20~30代の女性が30年間で50%以上減少するかどうかに基準を置いています。それをちょっと上回ったから『よかった』ということにはなりません。例えば、五ヶ瀬町は消滅可能性自治体から脱却し、日之影町は残りました」と話す。

「消滅可能性自治体というのは一種のアジテーションです」

 今回のような出産適齢期の女性減少に着目した分析は、人口戦略会議の副議長を務める増田寛也・日本郵政社長が10年前の2014年、座長を務めた「日本創成会議」で打ち出したのが最初だ。この時は全国の市区町村の半数近くに当たる896自治体が消滅可能性都市とされた。今回は744自治体が消滅可能性自治体とされ、各都道府県ごとの増減が関心事になっている。こうした話題そのものに罠があるというのだ。

 河野知事が続ける。「五ヶ瀬町は前回、減少率が50数%だったのですが、今回は50%を微妙に切ったので、消滅可能性自治体から外れました。決してそれだけでよかったということにはなりません。一方、日之影町は前回の70%台が今回は50%台。減少率は18ポイントです。消滅可能性自治体のカテゴリーには入っていますが、これまで10年間の取り組みに一定の手応えを感じることができます。

 また、西都市と川南町は50%近くまで減少しているのに、消滅可能性自治体とはされていません。入らなかったからよかったというふうに受け止めるべきではなく、それぞれが個別に検証を行うべきだと考えています」と、データの見方に留意するよう呼び掛けた。