1ページ目から読む
2/2ページ目

南北首脳会談から我々(オリックスファン)が学べること

*****これは文春野球コラム ペナントレース2018の記事である*****

 勿論、このような南北両国のイメージ工作、とりわけその「演出役」に当たった韓国の努力がどの程度功を奏したかは、これからの朝鮮半島情勢の展開を見なければわからない。しかしながら、ここから我々が学ぶ事ができる事が一つある。それは沈滞した状況を一変させるには、客観的条件を改善する事のみならず、主観的状況を変える事も重要であり、またその状況を変えるには、時には一定の意図的な仕掛けも必要だ、という事である。そしてそれは国際政治と言う世界の多くの人々をも巻き込む出来事においてすらそうなのである。

 そしてそれは当然、長年Bクラスに停滞し、今年もまたスタートダッシュに失敗したチームについてもいう事ができる。「今年もまた駄目なのか」。そう思った瞬間、人々は「このチームを応援するのは意味がないのではないか」との深い絶望に誘われる事になる。だからこそ早くも空席の目立つ京セラドームの姿は、このチームに対する信頼度のバロメーターに他ならない。球場の空席は選手の士気にも影響を与えるだろうから、それはチームを更なる低迷へと導く事にさえなりかねない。

ADVERTISEMENT

朝鮮半島情勢すら変えられるのだから、オリックスだって……

 だからこそ低迷状況を変えるには――首脳会談に相当する――大きな「イベント」が必要である。そしてそのイベントは「連勝」意外にはあり得ない。このコラムが掲載されるのはゴールデンウィークさ中の5月1日。(比較的) 多くの観衆が詰めかける大型連休の中、勝利を続けることができれば、チームの雰囲気は一変し、チームへの信頼を取り戻したファンは球場に駆け付ける事になるだろう。

 そしてその希望は勿論ある。下位に低迷するチームだが、今年の最も大きな光明は、例年と比べて先発投手が安定している事である。とりわけ新戦力の田嶋が3勝、アルバースが2勝を挙げている事が、今年の先発陣を底上げする事になっている。安定した先発陣の存在はこのチームが一旦勝ち始めれば勝ち続ける可能性がある事を意味している。

 とはいえ、そこには一つの不安要素が存在する。それはこのチームのエース金子が開幕から1カ月を経ったこの段階まで1勝をも上げ得ていない事である。ローテーションの大きな柱である金子の復調なくしてチームの快進撃はなく、連勝も勿論あり得ない。

今季まだ未勝利のエース・金子千尋 ©時事通信社

 あの誰もが解決不可能だと思った朝鮮半島情勢すら変えられるのだから、オリックスの状況が変えられない訳がない。そして筆者が間違っていなければ、このコラムが掲載される翌日の5月2日はちょうど金子の登板日にあたっている筈だ。相手は首位を走る強打の西武ライオンズ。この打線をエースが抑え込んではじめて勝利した時、チーム、そしてファンの士気は大きく変わる筈である。絶対的エースのシーズン初勝利にはじまる快進撃。チームの「印象」を変え、ファンの「信頼」を取り戻すためにも、是非見せて欲しいと思っている。

※「文春野球コラム ペナントレース2018」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイトhttp://bunshun.jp/articles/-/7224でHITボタンを押してください。

HIT!

この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。