“世紀の婚約”からわずか2カ月後の1993年1月27日、貴乃花関(当時は貴花田関)と女優、宮沢りえさんは婚約を解消し、それぞれ破局会見を行った。当時貴乃花は20歳、りえさんは19歳。若すぎた2人の目の前には、自分たちだけではどうにもならない壁が立ちはだかっていた。
この日貴乃花は、宮沢りえさんに続いて、自身が所属する藤島部屋で会見を開いた。グレーのワンピースを着ていたりえさんとは対照的に、レモンイエローの鮮やかな着物姿だった。
映画「幸福の黄色いハンカチ」ではないが、黄色は幸福をイメージさせる色。希望や躍動感もあるが、破局会見にわざわざこの色を選んだのは、部屋にとってこの破局がマイナス要因ではなかったということだろうか。
一方で、黄色は他に未熟さや幼さを印象付ける色でもある。会見中、貴乃花はりえさんを守れなかったのは「自分の力のなさ」と答える場面もあり、そんな意味も隠されていたのかもしれない。
答えなかった「花田家側から引退を迫ったのは事実か」という質問
会見冒頭から、貴乃花の歯切れは悪かった。破局の原因について聞かれ、「まぁ、うん。まぁ、うん」と視線を落として繰り返す。「家庭を持つということは、仕事も充実しなければならないことだと思い、それが自分にはできないんじゃないかと感じた」と話すが、口を開く時にパッという音が微かに響く。緊張やストレスで、唇を強く閉じてしまうのだろう。
この日に行われたりえさんとの話し合いの内容を問われると、一度座り直して鼻をすすり、「う~ん、そうですね」と左眉を上げ、眉根を寄せる。本音で言えば、この会見はしたくなかったのだろう。仕草から不愉快で厄介だと感じていることがわかる。
「今日の結果の通りですね。2人の気持ちが離れてしまったということなんですけれども」と破局の理由を語り、“どういう言葉で伝えたのか”と聞かれると、「まぁ、うん」と口元をきつく結ぶ。
視線を落としたまま顔をあげ、「宮沢りえさんにですね。自分の愛情がなくなったと伝えました」と小さく何度も頷いた。