「あいつに頼めば手に入る」売春婦に違法薬物を卸すようになり…
一度成功すると、「あいつに頼めば手に入る」と噂が噂を呼んだ。コカインやマリファナを求め、カルロスを指名してチップを渡す観光客が相次ぐようになった。
しばらくすると、ハワイでは仕入れ値が高いことに気づいた。ロスで知り合ったメキシコ人に頼んで仕入れ先をあっせんしてもらった。儲かるに連れて忙しくなり、ついにはレストランを辞めてプロの密売人に転向。当初は売春婦から調達した違法薬物だったが、立場が逆転してカルロスが彼女たちに卸すようになっていく。
しかし、栄華は長くは続かない。1年ほどすると、あえなく警察に逮捕され、ロスの刑務所に収監された。懲役4年半の刑だったが、二度と米国に入国しないということを誓約し、半分の2年になったという。20代半ばのことだった。
ロスの刑務所で麻薬組織の幹部に出会う
入所後は、前職を生かして厨房係となった。そこで出会ったのが、メキシコの麻薬組織ロス・セタスのブラジル人幹部だったという。軍隊の特殊部隊出身者らが設立した麻薬カルテルで、同国で最も危険なカルテルとされる。この出会いが、カルロスの人生を決めた。
日本食を食べたいという幹部に対し、「作ることはできるが材料がない」と答えると、すぐにリトル東京(米ロサンゼルスの日本人街)から必要なものが届き始めた。寿司を作ると喜び、毎日のように話す仲になった。「出所したら、一度リオデジャネイロに遊びに来い」と誘われもした。
マフィアに目をかけられたためか、セキュリティのしっかりした1人部屋に移された。日本の刑務所では考えられないような待遇で、シャワーも24時間使い放題だったという。
カルロスは「すぐに舎弟になった」
出所日が来て日本に送還されると、先に出所していた幹部に国際電話をかけた。そうして1週間後には約束通り、リオデジャネイロで幹部と再会することができた。
到着して見上げると、そこはプール・テラス付きの豪邸。毎日のようにパーティーが開かれていた。派手な生活に圧倒されたと、カルロスは言う。
「雑誌の『PLAYBOY』に出てくるような女の子がいっぱいいるわけですよ。幹部からは『いくらでも抱け』って言われてね」
羨望の眼差しを浮かべるカルロスに対し、幹部はこう迫った。
「お前にこの生活ができるか? 一生の内にできると思うか? たとえ、お前がこのままサラリーマンをやっても、年俸で言えば3万ドルぐらいだろ。いくら大学出だとしても、せいぜい三流大学だろう。そんなお前に何ができる? サッカーができるって言ったって、ブラジル人と比べればそんなに上手いはずもない。前科者だしな。料理の腕だって、刑務所内で役に立つ程度だ。そんなお前でも年間100万ドルぐらい稼げるような仕事といったら、この仕事(密輸)しかないぞ。だけど、お前はラッキーだ。この俺と出会えたんだから」