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サッカー・コーチと関係を持ち、妊娠して棄てられた14歳の少女は売春を始めた…衝撃作『少年と少女』が描いた“台湾社会の暗部”

台湾映画上映会2024リポート #4

source : 週刊文春CINEMA オンライン オリジナル

genre : エンタメ, 映画

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性的なシーンの演出で気をつけたこと

 会場からは、演技経験のない14歳の少年少女に対し、性的なシーンをどのように気をつけて演出をしたのか、という質問があった。

シュウ 14歳の少年少女にインティメイトな(親密な)シーンを演じてもらうのにはたいへん気を使いました。いま台湾でも多くなっていますが、*インティマシー・コーディネーターを入れ、少年少女の家族にも説明をしました。実際の撮影では、何度もリハーサルをしてひとつひとつ確認してから撮影しました。14歳の彼らは恋愛経験が豊富でなかったり、こうしたシーンの動作・行為がどういう意味を持つのか、それを伝えて演技をさせなければならなかったのですが、なかなか難しかったですね。

 また、少女が売春することでお金を稼ぐという極端な手段に出るのはなぜか、という質問に対して、監督はこう答えた。

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シュウ 少女の価値観では自然な方法だったといえるかもしれません。最初に、サッカーのコーチに身体を弄ばれ、無情にも棄てられたことから、自分の身体には価値がない、他の誰が好きにしてもいいじゃないかと。幼くはありますが、14歳ではこう考えてしまうこともあるのではないかと思います。

『少年と少女』 ©Rise Productions Co.,Ltd.

そこに生きる人を感じることができる台湾映画の魅力

 最後に、台湾映画の魅力について二人が語った。

三澤 台湾の映画はきらきらした映画だけではなく、社会批判を含んでいます。それが台湾社会の包容力であり、台湾映画の魅力だと思います。さきほど監督と話した際に、この映画の少年のように、台湾には未来に対する不安感があると言われていました。ウクライナ戦争が始まった後に、しばしば台湾のことが言われるわけですが、地政学的な台湾ではなく、台湾の人を想像してほしいと思います。台湾に生きている人を感じるのに、映画はとても魅力的な媒体であることをあらためて感じました。

シュウ 台湾映画の魅力は多様性にあると思います。今回の台湾映画上映会のラインナップ7作品を観てもとても多様な作品が並んでいます。映画監督としては、台湾で映画を撮るのは、資金さえ集めることができれば、どんな題材でもどんな角度でも制限はない。その自由こそが台湾映画の魅力だと思います。

*インティマシー・コーディネーター 制作側と俳優の間に立って、性的なシーンについての演出の意図を的確に俳優に伝えるとともに、演じる俳優を身体的、精神的に守りサポートする専門のコーディネーター。

サッカー・コーチと関係を持ち、妊娠して棄てられた14歳の少女は売春を始めた…衝撃作『少年と少女』が描いた“台湾社会の暗部”

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